俺は遠い遠い、幾世にも渡る古い記憶の中で少年と約束をした。
「必ず、幸せにするから。」と。
「生まれ変わったら、必ず君を幸せにするから。」と。

神の祝福を受けて幾度かジュードと同じ世界に生まれる事はできた。
ただ、彼と出会うのは決まって俺は26歳で彼は15歳。
遠い記憶の中で俺と彼は同じぐらいの年齢のはずだったのに、だ。
その年齢の差は出会えるものも出会えなくした世界もあった。
でもきっと、その年齢の差には意味があるのだろうと希望は忘れずに居た。
幸せにする為に必要な11歳の差。そう思う事にした。

一回目の転生は俺はとある屋敷の執事で彼もまた同じ屋敷の執事見習いだった。
その時は前世の記憶をしっかり記憶していた。
しかし、彼は違った。記憶など持ち合わせていなかったのだ。
彼に出会えて浮き足立った俺は彼に話しかけたが彼は「?」と首を傾げた。
26年楽しみに待っていた出会いに落胆し、それ以上になれないまま時間が過ぎた。

二回目の転生はほんの一瞬偶然に出会えたに過ぎなかった。
彼は学校の修学旅行の真っ最中で偶然海にやってきた少年だった。
俺はそれまた偶然仲間に誘われ海にやってきた時の事だった。
混雑するビーチで長年思いを寄せていた彼に出会えたのだった。
大勢の中で彼を見つけ走り出すも彼を捕まえる事はできなかったのだ。
そして彼とは二度と出会えないまま終わってしまったのだ。

三回目の転生は彼は学生で俺はその担任教師だった。
前回、前々回と違い近い場所で生を受ける事ができた。
今度こそ幸せにしなければ、と心に思うも仕事をしながら彼と親密になるのは困難だった。
放課後の図書室で一人で読書に勤しむ彼にヘアピンを渡すのがやっとだった。
「ありがとう、先生」とにこやかに笑ってくれたがそれ以上にもそれ以下にもなれなかった。

四回目の転生は彼は医学校の研修医で俺は一般人だった。
偶然担当医がおらず彼が申し訳なさそうに俺の前に現れたのだった。
それから彼に会えるかもと思い連日通ったが彼が出て来る事はなかった。

五回目の転生はとある衰退世界だった。
神の祝福を受けた俺は彼と必ず同じ世界に生まれる物だと思っていた。
しかしこの世界に彼は居なかった。
きっと4回もチャンスを与えてもらったのに叶えられなかった俺への天罰なのだろうと思った。
彼に会うために4000年もの長い月日を容姿を変えずに待ったのに出会えなかったのだ。
彼が生まれるのはもっともっと後の時代だったのかもしれない。
もしくは違う文明の世界なのかもしれない。


ここで4000年過ごしてしまったのが無駄だったのかもしれない。
ここらへんから俺の過去の記憶がだんだん曖昧になってきたのだ。
神の愛想も本当につきたのだろう。


六回目の転生はとある孤島だった。
文明、力を巡り彼と敵対関係に陥ったしまったのだ。
しかも敵対関係の上、俺と彼との関係は"親子"だったのだ。
俺も記憶をほとんど持ち合わせていなかったのもあり、幸せにするどころの話ではなかった。



「アルフレド」
「...?」
「アルフレド、起きて。」
「...誰だ。」
「君が忘れた君だよ。」
「小さい頃の、....俺?」
「性格には君のずーっと前の、前世の姿。」
「...?ところで、俺今これ、死んでるのか?ふわふわしてんだけど」
「どちらでもないよ。君が死んで、生まれ変わる前の姿だよ。」
「へえ。ところで、その昔の前世の俺が何かようなのか。」
「うん、だから君の所に来たんだよ。」

ふわふわと浮かぶ空間に俺と小さい頃の俺、正確には前世の俺。
もうほとんど覚えていないのだけれど、何かが胸に突っかかる。

「僕はね、ある男の子を幸せにしたくて神様にお願いしたんだ。」
「...はぁ」
「何回も生まれ変わっても、その子を幸せにできずにいたんだ。」
「...」
「神様ももうそのお願いを覚えていないかもしれない、今回がもう最期かもしれないんだ。」
「意味がまったくわからないんだけど」
「君はもう覚えてないんだね、あの子の事を。」
「?」
「だけどこれだけはどこかで覚えておいて欲しいんだ、あの子を幸せにして欲しい。」
「あの、子?」
「うん。これで神様がくれる最期のチャンスなんだ。彼とまた出会える事のね。」
「...」
「わからないよね、ごめんね」
「...」
「お願い、あの子を幸せにしてね。」

そう言い残してふわふわした空間が捻れ俺はある世界に転生した。
あの子とは誰なんだ。そう、訴えても誰も何も応えてはくれないけれど。
そして時は流れ、運命の時は訪れた。


『軍はお固いねぇ。女と子供相手に大人げないったら。』


銀貨の対価を俺は払う事ができるのだろうか。
俺は"あの子"を幸せにできるのだろうか。
それは誰も知らない、これからのお話。


『Die Sterntaler』

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