何処にでもある学校に僕は居た。
ただ流れるような月日に身を任せて少しずつ大人になっていく。
その過程で僕は一人の人と出会った。

「今日からこのクラスの担任になったアルヴィンだ。よろしくな。」

恋沙汰に疎遠だった僕にとって遅い初恋がやってきたのだ。
相手は年上で、しかも男で、自己紹介にフルネームを言わないという怪しさを含んだその男に恋をしてしまったのだ。
しかし、その恋心はわずか3日ほどで玉砕する羽目になった。

「せんせぇ、つきあって」
「生憎子供は対象に入らないんだよな」
「大丈夫だよせんせぇ、私こう見えても凄いんだから」

放課後、机の中に忘れた本を取りに教室へ行った時の事だった。
僕の後ろの席の真面目そうな彼女が胸のリボンとボタンを開けて先生にアプローチ。
先生の唇と彼女の唇が合わさる所を見て僕は胸の奥にこみ上げる何かを感じ、それがとても苦しいものだったので本は取らずに家へ全力で走った。

"見たくない、見たくない、嫌だ、嫌だ"

無我夢中で走った。
ドアを開けて自分の部屋に入り布団を被り呼吸を繰り返す。

所詮一目惚れで、相手の本質さえ知らないままの恋だったのだ。
まだ引き返せる。
それにあれは彼女が一方的にしただけだ、彼にその気がある訳ではない。
諦めたい気持ちと諦められない気持ちが交差する。
恋なんてしなければ良かった。

それから少し眠りについて、目覚めれば真っ暗だった。
部屋の電気を付けて開けっ放しのカーテンを締めようと手を伸ばした。

「・・・・・・・・・・・・・嘘だ。」

学校からそう離れてない僕の家。
その部屋から見たものはアルヴィンと彼女だった。
僕は急いでカーテンを締めてまた布団の中へ潜り込む。
わずか3日間の恋なのに、何故か涙が止まらなかった。

「ジュード、ご飯できたわよ。ジュード?」

仕事を終えた母さんの声が家に響く。
しかし僕は返事も行動もできなかった。

「寝てるのかしら。きっと疲れたのね。」

母さんごめんなさい。
ごめんなさい。

僕はこの日を境に部屋から一歩も出れなくなった。



『paranoia 01』


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