「もう、信じられないよ。」

伸ばした手を振り払われた。
今までに無い、優等生からの拒絶行為。

「さよなら、アルヴィン。」

こんなの慣れてる、俺は一匹狼。
だった頃には考えれなかった、喪失感に襲われた。


『酒と帰巣本能』


「アルヴィン、信じてるから」

そう儚気に言うジュードをなんて物わかりが良いのだろう、これなら大丈夫だ。
そう考え続けたのが間違いだったのだろうか。

「アルヴィン、あの人誰?!」

涙混じりで俺に怒るジュードを健気だなあと軽く流したのが間違いだったのだろうか。
母親の為に裏切る事は必要な事だった。何をおいて、ものはずだった。
その母親が死んでしまって、この世界で生きる為に必要な糧を失ってしまって。

「前に進もうよ」

そう自分を励ましながらも俺を励ましてくれて。
もう、縋るものさえなかったから必死にこの居場所にしがみついていたのに。

「待ってくれ、待ってくれよ」
「...もう、信じられないって言ったよね」
「だから、それは」
「言い訳は聞きたくないんだ、アルヴィン」
「俺は..!」

しがみついた手をまるで虫を叩くような感覚で叩かれ、置いて行かれた。
振り払われた手はもう縋るものさえなくて、風を撫でて地面に落ちて行った。

「俺は、どうすればいいんだよ...ジュード...」

精霊の主はもう、手の届く事すら叶わない場所に居て
俺に言葉をかけてくれるお姫様も学校生活に夢中に進んでいて
指揮者様も俺と交わす言葉もないぐらい忙しい人になってしまって
銃で撃ってしまった手前、元気のよい少女には自分から顔向けはしずらい関係で

「おい、その辺にしといたらどうだ」
「....飲ませてくれよ、今日は」
「何、良い年した男が泣いてるんだよ」
「...いいだろ....」

仕事仲間のユルゲンスにも本音は吐き出す事もできず、グラスに入った酒は消えて行くばかり。
みっともなくても良かったからあの場で泣き叫んで体を抱き寄せて、、
なんて悪循環な考えは浮かんだけれども、昔みたいに微笑んでくれる事はもうないんだろう。

「どうやったら、また側に居られるんだろうか」

そんな独り言は酒場の賑やかな音に消されてしまいユルゲンスの反応はなかった。

「アルヴィン!」

そう、俺を呼ぶジュードの姿が頭の中でしきりと流れて来るが所詮幻想にしかすぎなくて。
その姿を思い浮かんで、いい大人のくせに涙腺が緩んで来る。

「マスター、もう一杯」
「おい、そろそろやめろよ」
「なぁ、ユルゲンス」
「..なんだ」
「飲み過ぎて倒れたら、ジュードの居る病院に連れてってくれ」
「,,,止めても、聞かなそうだな」

お願いだから、哀れんで、もう一度手を差し伸べて欲しい。
なんて、都合の良い事を考えて、また酒のグラスを空にした。





ED後にうっかり裏切るというか、嘘をついてしまった話。

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