ここはアルクノアの拠点のとある廊下。
俺達がこの世界に迷い込んでから15年余りに経とうとしている。
毎晩、夜になると誰かの啜り泣く声が聴こえる、そんな噂を耳にした。

"―い..と―さ.."

微かに聞こえて来る子供の泣き声というより、懇願やら嗚咽に近い声。
その音が聴こえて来る部屋の隙間から部屋を覗く。

"ひゃ..や、めて..とう..さん"
"やっぱり、お前はエリンにそっくりだ"
"あぁっや!ぼ、..くは..ジュー..ドだ...よ?"
"エリン..エリン....っ"

俺はその部屋の浮世離れした光景に思わず食い入るように見てしまった。
年端もいかない子供が大の大人に犯されていた。
そしてその子供は相手の事を"父さん"と呼んでいたのだ。

"うっ、いたっ..も、やめ"
"お前が..唯一エリンが残した..."
"あ"ああぁっ、たい"

"エリン"その名前はジランドが最近話していた名前だ。
マクスウェルとの黒匣を巡る争いでアルクノアは多大な被害を受け、重傷者が多く出た。
中には体を不自由にする者も出て来てしまいとある医者に医療ジンテクスを処置させる計画が生まれた。
何でもその医者は自分が居着いた街から離れるのを拒み、威嚇の為に打った銃弾がその医者の奥さんの命を奪ってしまったらしい。
そしてその医者は呆然とするまま拠点に連れてこられ、家の中に居た子供も連れてこられたらしい。

「あぁ、その"医者"と"医者の子供"か」

ジランドが呆然としている医者の事を愚痴る時に"エリン"という名前を聞いたのだった。
納得した所で背後から足音が聴こえたので通路にそっと身を隠す。

「おい、ディラック。ジンテクス処方者の容態がおかしい。」
「...」
「さっさと来い」

そして足音の主とディラックと呼ばれる例の医者は暗がりの通路へ消えて行った。
俺はこの部屋の中にとても興味が何故かあった。
多分、同情とかいうのも混じってると思う。
自分と同じ、もしくは自分より酷く悲しんでる奴の姿を見て、軽い自己満足をする、アレ。

「っ..ふぇっ...」
「おい、ガキ。」
「!?」
「そんなに驚くなよ、えーっと、"ジュード"だっけ」
「っ...」

中に入れば、予想通り精液に塗れた子供が目と体を真っ赤にさせて泣いていた。
黒い髪に残る精液や細く白い腕に残る掴まれ拘束された痕が酷くギャップを感じた。
無理矢理に体を暴かれていたのか、カーペットは所々赤いシミができている。

「俺は、別にお前に酷い事をしようと思って来たんじゃ..」
「..ぇっ..っ」
「おいおい、泣くなよ。な」

会話すらまともに交わせないぐらい泣いてしまっている。
とりあえずタオルかなんかでもかけてやろうと部屋の奥に進もうとした時、足にコツンと何かが当たった。
瓶がコロコロと床に転がって行き、それを手に取ると催淫剤と書かれていた。
あの医師の頭の壊れ具合に落胆し、その子供の下半身を見れば小さな性器が起っていた。

「...それ、大丈夫なのか?」
「..ぼ、く、どうすれば..いいか...わかんなくて...」
「..ってもなあ」

顔は火照って目は虚ろで口は半開きで俺に助けを求める子供は何処か艶やかだった。
自慰さえも知らないぐらいの子供に何をやってるんだと、子供の性器に手を付けようとした。
しかしそこはあの医師ディラックが散々弄んだのか酷く赤みを帯びていて少し触るだけで少年は悲鳴に近い声をあげてしまった。

「...ジュード、体、力抜いて」
「...ぅ..ん」

何で俺はこんな事をやってるんだろうか、頭の中で何回も自問自動した。
ジュードを仰向けに寝かせ散々欲望を受け止めていた小孔に指を入れる。

「うっ..!」
「言っとくけど、そんな趣味ないから、痛かったらごめんな」
「ぁっ」

指をゆっくり侵入させ中を少しずつ解し、バラバラと動かして前立腺を探す。
一際反応が大きい所を見付けそこを指の腹でぐりぐりと押すと肢体はビクビクと反応した。
目の前で透明な液を垂らす性器を包み込むように銜えれば甲高い声を放った。

「ぁあぁ、な、..これ、ゃっ!」
「...っ」
「ぁっ..ひゃぁっ!!!」

口の中に吐き出される液体はもう少量しか出なかった。
当の本人は体で必死に呼吸しながらも嗚咽に近い声でまた泣きそうだった。
しばらくして呼吸が落ち着いたジュードを小脇に抱えて備え付けの風呂に入る。

「あの...」
「アルヴィンだ。」
「..アルヴィン、ごめんなさい...」
「..気にすんなよ」
「...僕の、父さん...あ、んな人じゃ...無かったのに...母さんが...」
「...」
「もう...」

もう今にでも泣き出しそうなジュードの頭にお湯をかける。
びっくりしたように驚いて、こっちを凝視してくる。

「はは、悪いな」
「もう。...僕、もう...父さんに....会いたくないんだ」
「随分早めの反抗期だな」
「..。アルヴィンが来るまで、ずっと..閉じ込められてて。繋がれてて。」
「最愛の人が生んだ最愛の子供まで居なくなったらもう絶望だもんな」
「...アルヴィン、お願いがあるん...だ」
「何だよ。子供でも安くしねーからな」
「...僕を、ここから、連れ出して」
「は?!」
「しばらくしたら...父さん、元に...戻るかも、しれないし」

俺は一瞬顔を顰めてしまった。
"戻れなくなってしまった人"を知っていたからだ。
同情が更なる同情を呼んで、本当自分でもらしくないと思ったが。

「なら、どこに行きたい」
「どこでもいいよ、できたら、遠くに。」
「わかったよ」

そうして、アルクノアの拠点から同情が結んだ2人の旅が始まった。


『哀憐を食む部屋より』





仕事中こんな事ばっか考えてましたすみません←
んな時に隣の部屋から内線が掛かって来たらまじでビクッとします。

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