「これとか、アルヴィン、喜ぶかな...」

トリグラフの商業区で久しぶりの一人での買い物。
リーゼ・マクシアとエレンピオスが一つになってから研究の課程でエレンピオスに訪れる事が多くなった。
研究もあるけど、そこに住むアルヴィンに会いに行く事も目的の一つだったりする。

「でも、僕のプレゼント、喜んでくれるのかな」

あの後、しがらみや蟠りから開放されたアルヴィンとの生活は順調だった。
アルヴィンは何か仕事を始めたらしくて、事ある毎に報告はくれてる。
欲しい物ももう自分の力でなんでも買えるアルヴィンに、何をあげればいいのかイマイチわからない。

「すみません、これ、ください」
「包装するかい?」
「お願いします。」
「彼女にかい?」
「まぁ、そんなところです」

果たして彼女でも彼氏でもない僕らをなんて表現すればいいかなんてわからないけど。
とりあえず物は購入して商業区を抜けて居住区へ急ぐ。
この角を曲がればロドマンション...に、着くはずだった。


『悪夢の入り口』


「うっ...」
「旦那、ホントにこのガキで合ってるんすか」
「あぁ、間違いねーよ。アレと一緒に歩いてる所見たからな」
「了解っす」

曲がり角で、1人の男とぶつかり後ろに下がれば後ろに居た男に背後を取られてしまった。
とっさに払おうとしたがその前に口を木綿状の湿った布で覆われてしまった。
それから、すぐに僕の意識は遠い所へ行った。

「おい、ガキ、起きろよ」
「うっう...」

カビ臭く、埃っぽい部屋で僕は目覚めた。
髪を引っ張られ無理矢理顔を起こされ痛いし、先ほどの薬のせいで目前さえする。最悪だ。

「これ、何かわかるか」
「...!?」
「おめーさん、撮らして貰ったぜ。よく出来てるだろ」
「な、なんで..僕を..どう、する気...」
「これをー、シルフモドキの足に付けて、"アルフレド・ヴィント・スヴェント"まで。さあ、行って来い」
「...どう、して...」

今の出来事に朦朧とする頭がまったく付いて行かない。
身につけてる服も全て取っ払われて、手足の自由さえない今の状態。
その状態を更に写真に撮られてアルヴィンに送る、まったく意味がわからなかった。
この状況を脱するにも手足の自由を解かなければならないし僕の服も部屋の隅に無造作に捨てられている。
あの、ポケットに、とても、大切な物が入ってるのに...。

「なんで..こんなこと...」
「あのいけ好かない野郎が始めた商売のせいで俺らの仕事が減ってきてんだよ。」
「んで、君を人質にしてあいつにはこの業界から降りてもらう。」
「..まさか、密―」
「ご明察。あいつが居ると商売がしにくいんだよ、だからお前は人質だ。」
「..アルヴィンが..せっかく全うに生きてるのに..邪魔しないでよ..!」
「口だけはご立派だね」
「うっ」

肩を蹴られ縛られた体は止められる事なく床に落ちた。
そしてその落ちた頭を容赦なく踏まれて目眩が更に酷くなる。
アルヴィンは、来たら..だめだ。せっかく、自分の意思で見つけた事をしてるのに

「ほら"助けて、アルヴィン"なんて言わないのか」
「い..言わないよ..、アルヴィンの足枷になるくらいなら」
「君、状況理解してる?」
「っう..やめ」

男のブーツのヒールが頬にくい込んで酷く痛む。
死ぬかもしれない、犯されてズタボロにされるかもしれない
それよりも、不器用なあの人がやっと見つけた物を壊させる訳にはいかなかった。

「シルフモドキなかなか帰ってこねーな。」
「仕方ねーから、速報第二弾という事で」
「あいつからの返事がないっていう事で、退屈だから、暇つぶしさせろよな」
「やっ!!!」

男に肢体を持ち上げられ膝を高く持ち上げられ、恐る恐る下半身を見ると男のモノを自分の中に突っ込もうとしてる所が見え体が震えた。
震える僕の体を押さえつけるように胸の上に座った男が僕の顔の前にグロテスクな赤黒い性器を取り出した。
それを口に向けられ顔をとっさに横に降れば反対の頬を思いっきり殴られて唇を噛み締めてたせいか口の中に亜鉛の味が広がった。

「や、やめ...!!!あ"あ!!!!」
「ごめんなー、ジュード君の血が見たくて全部いれちゃった」
「ひぃっ、痛っ、や..や..」
「このせまーい、中にもう一本入れちゃったら死んじゃうかな」
「それぐらいで死なねーよなー」
「ほら、その真っ赤なお口で俺のも良くしろよ」
「あ"っ、や、」

側に居た男が更に自分の中に入ろうと近寄って来る姿が見えて目眩と吐き気が更に酷くなり。
顔をまた背けたと僕の顔の近くに居る男は僕の髪の毛を掴み、無理やり突っ込もうとさえしてくる。
足枷になりたくないのに、今一番助けて欲しいのは僕の悲鳴を聞いた一般人でもなくアルヴィンしかいなかった。

「旦那、来なかったらどうするんっすか」
「そーだなー、臓器売る?それともー、売春婦として売っちゃう?今までの赤字よりプラスになりそうだしな」
「どっちにしたって俺らに金が来る事は間違いねぇな」
「あ、やっ...あ"あ"ああ!!!!!!」

僕の中に更に一本と性器が入り,体が引き裂かれそうな痛みが全身を襲った。
そこから相互に動かれ、裂かれたものを更に引き裂かれようとして意識さえ飛びそうになった。
それさえ僕の目の前に居る男は許さず殴ったり叩いたり引っ張ったりと休む事さえ許してくれなかった。
それがしばらく続いて男達が白濁の液を僕の中や顔や口にまき散らして卑劣な言葉で罵倒して僕の側から離れた。

「じゃあ、速報第二弾をアルフレド君に送りまーす」
「...や......め....」

手を伸ばす事すら叶わない、シルフモドキが空へ飛び立つ。

"バサバサ"

見上げた空からシルフモドキの羽が数枚天空を舞って、部屋に入って来る。
それと同時に見慣れたブーツが窓枠に見えた。

「あ?誰に送るって」
「今更来たって遅いんだよ、こいつを返してほしけりゃ」

"バン"

部屋から銃声が鳴った。
アルヴィンが発砲した物だった、それで崩れ落ちる男が一人。
僕の近くに居た男が僕にナイフを向けるがそれすら撃ち落として、結局男達は血床に伏した。

「...ア.....」

その姿を見る事なく、大切な人の名前の一文字目だけ残して僕の意識はまた、遠くに行った。
結局、この人に助けられてしまったのだ。
目が覚めると僕はロドマンションの一室のベッドの上で寝ていた。

「目、冷めたか」
「う..ん、っ!!」
「無理すんなよ、骨、何本か折れてるし..血も」
「ごめんね..」
「なんでおたくが謝るんだよ」
「僕が、もっと気をつけてれば、よかったから」
「違うだろ、俺を恨んでもいいだぜ」
「..でも!」
「"結局、アルヴィンが助けてくれたでしょ"ってか、優等生」
「...」
「シルフモドキが来たのが船の上だったから..時間がかかって悪かった」
「いいよ、そんなの」
「よくねーよ。」
「..本当は、来て欲しくなかった。でも来て欲しかった。でも、アルヴィンの足枷には」
「そんな事言うなよ。お前見て、俺も何かしようと思えたのに、ジュードが居なくなったらどうすればいいんだよ」
「自分の事は、自分の意思で、じゃなかったの」
「あのな..そういう事だけじゃなくて、...」
「いいよ、わかるから」
「..これだから、優等生は」

寝ずに僕を見守り続けたのか目の下は隈で酷かった。
ベッドの横にある時計とカレンダーを見れば、あれから数日は経っていた。

「アルヴィン、僕の服は」
「ほらよ」
「..ありがとう」

咄嗟にポケットの中に手を入れて中を確認しても何も入ってなかった。
アルヴィンの為に用意したプレゼントはあの忌わしい場所にあるのだろう。

「僕の、服、しかなかった..?」
「連れ出すのが精一杯でそこまで見れなかった。なんか大切な物でも無くしたのか」
「アルヴィンにプレゼントを、入れてたんだけ...ど」

"取りに行きたい""あの場所には行きたくない""でも渡したい""でも""でも"
"あの場所"を思い出した瞬間再び目眩と吐き気に襲われて、呼吸が乱れそうになる。

「無理するなよ」
「アルヴィン..ごめん」
「だから、そう何度も謝るなよ」
「誕生日も、もう過ぎちゃったし」
「じゃあ、ジュード君が元気になったら買いに行こうな」
「..うん!」

顔色の悪いだろう頭をアルヴィンの大きな手に撫でられてるうちにゆっくりと今度は眠りの世界に入って行った。
今度あの、プレゼントを買い直そう。
きっとお店の人には"随分男らしい彼女ね"なんて誤解されるかもしれないけれど。





アルジュ前提のモブジュ。
なんかジュード君が可哀想。

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