「先生、彼女居るの?」
「彼女は、いないな」
「なんか意味深ー!」
「あ、分かった!愛人が居るんだ」
「お子様の妄想力は激しい事だな。」
「はぐらかさないでよー!」
「はぐらかしてないって」

授業を終える鐘の音が鳴って、新任教師のアルヴィン先生の所に群がる女子達。
かっこよくて、人当たりはまあ良くて、そんな先生は女子に人気みたいだ。
授業が終わる度にこんな光景を見るのは最初は微笑ましく思っていた。
でも最近はなんだか、モヤモヤ。なんだろうか。

「じゃあ、どうやったら彼女にしてくれますかー?
「お前らがあと5年は経たないと先生捕まっちまうわ」
「ケチ!じゃあ、先生はどういう人が好みなの?」
「質問攻めだな」
「いいじゃない、ね!」
「うーん」

微笑ましかった光景も今では目を瞑りたい。
そうやって触らないで。優しい顔で微笑まないで。期待させるような事言わないで。
そうやって触らないで。上目遣いでキツい香水付けて誘わないで。誘惑させないで。

「教えてよー!」
「うるせーなったく。」
「ほら、チャイム鳴っちゃうから早く教えて!」

教えないで、教えないで。
そうしたらきっとそこに居る人が皆アルヴィンの好みになっちゃうから。
だから言わないで。
自分の席で本を読んでるけどまったくページは進まない。結局僕は1ページも捲れずに休憩時間は終わった。

「ジュード。後でプリント集めて部屋に持って来てくれ」
「...はい」

教室を出る間際に僕にそう言った。
アルヴィンが教室を去ると前に居た女子達は散らばり僕の隣の席の女の子が話かけてきた。

「ねえ、ジュード君。」
「なに?」
「アルヴィン先生に好みのタイプ聞いて来てよ!男同士なら聞きやすいでしょ?」
「直接聞いてみたら?」
「だって教えてくれないんだもん」
「アルヴィン先生はいじわるだね。」
「ね!お願い!」

僕にそう言って来た女の子は"タイプが分かったら全力で好かれるようにする"なんて張り切ってた。
きっと僕じゃ叶わない、アルヴィンが取られちゃう、そんな気ばかりしてた。

「アルヴィン、プリント。持って来たよ」
「サンキュ、優等生。」
「うん...」
「不安そうな顔してる」
「え?」
「俺が女の子と話す度に儚くて、寂しそうな顔してる」
「分かってるなら、ううん。無理だよね。先生だし」
「ジュード君の嫉妬って可愛いな」
「アルヴィン、うるさい。」

ニヤニヤケタケタと微笑みながらアルヴィンはそう言った。
分かってるなら辞めて欲しい、なんて思うけどそれは仕方のない事なんだと受け流すしかなかった。

「俺は、黒髪でショートカットでツリ目でパレンジみたいな瞳の色で料理が上手でお人好しでお節介で虫が嫌いな寂しがりやな子が好みだからあいつらは違うな。」
「...全部、僕じゃない」
「そうだよ。だから心配すんな」
「...アルヴィン」

そう言って、僕の頭を一撫でするとチャイムが鳴って僕は急いで教室に戻った。
でもアルヴィンがそう言っても僕は心配が拭い切れないでいた。
きっと他の教室でも同じような事があるんだろうと想像するとやっぱり苦しい。

「あ、ジュード君。聞いて来てくれた?」
「うん、ちょっとだけ。」

アルヴィンにあれだけ言って貰ったのに何故か不安。
目の前の恋する女の子が"あの通り"になったら、アルヴィンは僕を好きで居てくれるの、とか。

「じゃ、教えてよ!」
「言ってもいいのかな、秘密って言ってたけど」
「えー、じゃあこっそり、ね!」
「アルヴィン先生、本当は恋人が居るみたいだよ。黒髪で可愛いんだって」
「そ..そうなんだ、ありがとう。」

生まれて、指折りできるぐらいしか付いた事の無い嘘を言ってしまった。
心の奥で、嘘を付いた自分とアルヴィンに申し訳なく思うけど目の前の女の子の事は何も考えてなかった。
このモヤモヤな気持ちさえ無ければ、良かったのに。
僕は隣の席のブロンドで綺麗な子の俯いた表情を横目にまた読書へと戻った。


『ごめんね、それは僕のもの』


「ジュード」
「なに?アルヴィン」
「業務執行妨害で怒るぞ」
「ちょっと嘘は付いたけど、本当の事でしょ」
「小悪魔だな」
「ちょっと、虫の居所が悪かっただけだよ」





学パロ書いてみた。
学パロを書くと、どうしても淡白で難癖付ける小悪魔みたいなジュードみたいになってしまう。

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