貴族の社交界で部屋の隅に立ちすくんで手持ち無沙汰な女性が一人居た。
綺麗な黒髪で透き通る肌がとても美しかった。

「そこのお姫様、社交界は嫌いなのか?」
「そんな訳じゃないけど...」
「じゃあ、俺と一曲踊ってくれる?」
「ダンス、上手にできないんだ」
「俺が上手くリードしてやるから、な」

跪き手を拝借し手の甲にそっとキスをしてやったら、白い肌がほんのりピンクになった。
ハイヒールに慣れていないのかフラフラと歩く彼女の腰に後ろから手を回した。

「名前は?」
「ジュード、ジュード・マティスです。」
「あー有名なお医者様のご令嬢様だな」
「ご令嬢と言う程身分高くないよ、それに服もこれしか持ってなくて」
「じゃあ何がいい?シルクのドレスでもダイヤでもどんな宝石でもプレゼントしてやるよ」
「そ、そんな、今出会ったばかりなのに..!」
「そんなのは関係ねーよ。世界中の女性は全部俺のモノ」
「...!物で釣られないよ、僕は」
「関係ないな。この世はお金が全てなんだよ。愛すらお金で手に入る。」
「貴族様らしい言葉だね」
「俺が買った服を着飾って、その後は君の心も俺が手に入れるんだよ」

ワルツのターン、曲の僅かな休符の間にそっと頬にキスを落とす。
ダイヤより綺麗な瞳が揺れる、早く手に入れたい気持ちが加速する。

「僕は、お金なんかじゃ手に入れられないよ」
「手に入るよ、この世はお金が全てだ」
「醜い話だね」
「そんな事ねえよ。その金で美しいものが手に入るなら美しい"金"だと思わないか?」
「そうなの?」
「じゃあ、試してみる?」
「やってみれば、僕はそんなに簡単に落とされないよ」
「どうだろうな。1週間後にはお姫様は俺の手が離せなくなってるぜ」

パートナーチェンジで彼女と別れる。
新しいパートナーの女性を口説きながら横目で先ほどの美しい女性を見たら一瞬目が合った。
もう俺を意識せずには居られないだろう。


「ジュード、ほら言っただろう。愛すらお金で手に入るって」
「父さんの病院を買収しただけでしょ」
「それだけで、もうジュードは俺の部屋でこうして夜を共にしてるじゃねーか」
「それは成り行きで...」
「でもこうして、俺はジュードを手に入れた訳だから。俺が言ってる事は正しいだろ」
「...」
「反論できないのか?」
「う...ん」
「お前はそうなる運命だったんだよ。」
「臭い台詞だね」
「..。一流のドレスにダイヤ、青い薔薇の髪飾り、その次は何が欲しい?」
「僕は..」
「なんでも言ってみろよ。"金"だけは沢山あるからな」
「じゃあ、アルヴィン、貴方の愛が欲しい」

俺を見つめてそう言ったジュード。
恥ずかしいのか言い終わったら目線は反らされてしまった。
シルクのドレスとダイヤで着飾り世界でまだ一輪しか咲いてない青の薔薇の髪飾りで俺色に着飾ったジュードは最後に俺の愛が欲しいと言った。
"美しいジュード"を手に入れる為の"金"はなんて美しいんだろうか。


『Noble Days』





友人の作った曲を聞きながら作った話。←
アルヴィンがエレンピオスでそのまま育ったらこんな感じになりそう。いや、ならないだろ。

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