"コンコン"

部屋の掃除を終え、洗濯物を干し終わりゆっくり読書でもしようとした時だった。
玄関からのノック音が聴こえた。"郵便かな"なんてスリッパをパタパタ鳴らしながら玄関へ向かう。

「ジュード・マティスさんですか」
「はい、そうですけど。僕に、用ですか」
「警察ですが、調査に協力して貰ってもいいですか」

玄関を開ければ警官衣装に身を包んだ20代半ばの体格の良い茶髪の男が居た。
目の前で開かれる警察手帳に何も疑いものなく"はい"と答えた。

「昨日、ここの路地で婦女殺人事件があったのはご存知ですか」
「はい。隣の203号室の女性の方ですよね。旦那が言ってました。」
「失礼ですが昨日の21時頃隣の部屋から不審な物音はしませんでしたか」
「いえ、特に。」
「では、その時間は誰と何をしてましたか。あぁ、別に奥さんを疑ってる訳じゃないんで。一応形式的にで、聞かせて下さい。」
「...旦那とテレビを見てたと思います」
「嘘、ですよね」
「やっ!」

手首をいきなり捕まれ、男はそのまま押し入って来て壁に追い込まれた。
叫んで助けを呼ぼうと広げた口は男の手によって固く閉じられた。

「ぅっ...!」
「正直に言ってみろよ、ジュード"先生"」
「?!」
「昨日の21時は、旦那とセックスしてただろ」
「!」

自分は少なくともこの様な男に見覚えが無い"先生"と呼ぶ情報は何も与えていないはず。
そして僕はテレビなんて見ていない、男の言う通り"セックス"していた。

「8時起床、9時タリム医院に出勤、13時プラン看護婦とサンドイッチを食べ、17時退社、18時最寄りのストアで買い物、19時帰宅食事、20時旦那の伴食、21時旦那とセックス、22時就寝。だろ」
「?!」
「当たってる、て顔してるぜ。その前に」

僕の昨日のスケジュールをそのまま言う男に恐怖を感じただ震える事しかできず
手首を開放されたと思えば男が周到に用意していたロープで腕と足は拘束されてしまった。

「"先生"は護身術心得てたから、用心しとかねーとな」
「な、んで..」
「綺麗な女の人とヤりたい。それだけ」
「や、やだ!!お願い、それだけはやめて..」
「それは聞けねーな。抵抗するなら隣の人と同じ事になっちゃうけど」
「ご、強姦して..殺すの..?」
「それはハズレだな。"先生"ストーキングしてたらうっかり見つかって殺しちゃった。」
「?!」
「だから死にたくなかったら相手してよ。」
「や、だ、いや!!」
「あー旦那さんには嫌われちゃうかもね。潔癖性、なんだろ。今のジュード先生はとっても綺麗だけど、俺が今からドロッドロに汚すからな」
「お、お金なら..いくらでも出すから、お願い..」
「金?金なんていらねーよ。」

銃を突きつけながら僕を脅す男はただ、僕を絶望に落とそうとする。
男の言う通り、旦那は潔癖性だ。少しずつ関係を深めて行って、やっと入籍できて、普通にセックスもできるようになった矢先だ。
そんな些細な幸せをこの男はぶち壊そうとしている。これは夢だと思いたかった。

「じゃあ、先生。俺を気持ちよくしろよ」
「ひゃっ、や、やめて!!」

旦那に選んで貰ったお気に入りの服に手をかけボタンを無視し引きちぎった。
叫ぶ僕を疎ましく思ったのか、唇にねっとりとキスをされた。
手は豊満とも言えない胸を揉み乳首を潰すように弄られた。

「ふ..」
「..」
「ふぁ...は...や..」
「もしかしてディープな方は経験ないの?」

見透かされて思わず顔を背けてしまった。少しずつ、進んで来たのに。
そんな回想をしていたら男の手は下半身に伸びていた。

「触らないで...」
「あんた今どんな立場かわかってんの?」
「汚れるくらいなら、あの人に...嫌われるなら、死んだ方がいいよ」
「気にくわねーな。可哀想な先生の為にせめて優しく、なんて思ってたけど。やめた」

抵抗を辞めた僕の力のない足首を掴んだ男は欲望を秘部に押し付けて来た。
痛みはあるけど血が出る程じゃない、どうせなら血だらけになる程犯して"汚さ"なんか気にならないくらい汚れて同情して貰いたい。

「その顔、ムカつく」
「よく言うよね。人の幸せぶち壊してるのに。...ひゃっ!」
「冷静なフリして、体は結構正直だな..!どうせ、自分が満足する前にいつも終わってんだろ」
「っあっ!べ、別に..そ、それっでも良かった..!前に、すすっ..めるなら」
「健気で可愛い事だなっ!」
「ひゃっあぁ!」

強姦犯に自分の気持ちなんかわかられてたまるか、と思った。
肢体を犯されてももう涙はでないけれど、ボロボロにされた心のせいで涙は結局流れてしまった。

「あっゃっ」
「はっ...泣きながら喘ぐ姿も可愛いな」
「あっん!」
「旦那にも触って貰えないような奥突いて気持ち良い?ねぇ?」
「やっ、ちがっあぁっ!」
「善がってんじゃねえかよ...、も、イくからっ」

結局強姦男はその痕も何回も僕の中で果てて、自分も何回かわからないぐらい果てた。
気づいたらもうその男は居なくて僕の手足を拘束するロープも無かった。
旦那はまだ帰ってなくて重い体を無理矢理起こせば体は悲鳴を上げ下半身からは男の精液がボダボダと流れた。


「アルヴィン、お前に用だと」
「あ?」
「美人が店の前でお前を出せってうるせーんだよ。早く行けよ。」

それから幾らかの月日が立った、ある日の事だった。
俺が常連の様に居座る酒場のマスターに俺に用がある女が居ると声を掛けられた。
もうすっかりあの日犯した女を忘れそうになっている頃だった。

「誰かと思えば、タリム医院のジュード先生かよ」
「...」
「その後変わらず、幸せか?」
「...」
「...何物騒なモン持ってんだよ。」

その女の手には包丁が握られていた。
アンダーグラウンドな場所にある酒場なせいか風景との違和感はあまりない。

「...やっと、見つけた」
「そりゃ、ご苦労な事だったな。何、旦那とは別れたの?」
「...捨てられたよ。僕と、僕とアルフレド・ヴィント・スヴェントの子も一緒に」
「は?」
「あの人、無精子症で。俺の子じゃないって。浮気だってって。」
「災難だったな。」
「だから、死んで欲しいんだ。」
「早まるなよ、ジュード先生。」
「早まってなんかないよ、貴方を殺して、僕も死ぬ」
「...物騒な事で。」


『強姦犯と見る白昼夢』





不審者アルヴィンが若人妻♀ジュードの幸せをぶち壊す話。
最近、病んでるジュードが多い気がする。

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