「アルヴィン..!」
「なんだよ、ジュード」
「何処、行くの...?」
「何処でもいいだろ。夜には帰って来るから。」
「ご、ご飯は一緒に食べれるよね」
「悪ぃ。飯は外で食うから、一人で食っといてくれ」
「アルヴィン」
「まだ何かある?話あるなら帰ってから聞くから。じゃあな」

そう俺を不安そうに玄関口から見送るジュードの頭を一撫でして部屋を出る。
ジュードは"うん..じゃあ"なんて言って送り出したけど納得いってないのはバレバレで。
まぁ、バレバレなのは仕様がない。俺が悪い、と思うから。


『香水の匂いとキスマーク』


最近はあまりジュードと触れ合う事も少なくなった、一緒の部屋に住んでは居る、が。
元々同性という事もあるし、何より寂しがりやのジュードと一緒に居るのも疲れたという事もある。
あからさまに女の香水に塗れて帰宅したり、首筋に女のキスマークなんて付けて帰宅したりもした事もあった。
1回目はジュードは少し拗ねたようにしてたけど、そこまで怒らなかった。
"仕方、ないよね"なんて言って笑っていた。
2回目はちょっと泣きそうな顔をしていた。それでも怒らなかった。
"一番は僕、だよね"なんて不安そうに言って来た。
ゴキブリ1匹居たら100匹は居る、みたいに浮気は2回じゃ終わらなかったし両手じゃ数えきれない程になったのかもしれない。

「アル、もう帰るの?」
「あぁ」
「次はいつ来てくれるの?」
「さあな」
「私、引っ越そうかと思ってるのよ。最近不審者が多いみたいだし。」
「..なのか、お前また首に付けやがって」
「いいじゃない。今更、でしょ」

俺は女の家を足早に出た。夜には帰る、とは言いながらもう日付は変わってしまっていた。
どうせ怒らないし、な。どこか心の中でそんなゆとりがあった。

「まだ、電気付いてるな。」

とっくに寝たものと思って自室を見れば部屋には明かりが煌煌と付いていた。
いつもは酔っぱらって帰る事も多くて帰った時の事は覚えてなかったけど、今日は酒を飲んでないから意識はある。
帰るのが億劫にもなったけれど、あの不安そうな顔を思い出して駆け足で階段を上った。

「..ただいま」
「アルヴィン、おかえり」
「ジュード、待ってたのか」
「うん」

俺は部屋にあるソファに腰をかけてジュードは座らずに俺の後ろに立っていた。

「今日はーさんの匂いなんだね」
「あ?」
「女の人に突っ込んで気持ちよかった?僕より気持ちよかった?」
「何でもいいだろ」
「よくないよ。こんな所に痕付けて」
「ジュード..!」

キスマークの上に再び唇を這わせられキツく吸われた。
仕舞にはガリっと噛み付かれ痛みが走った。

「ってか、俺、名前言ってないけど」
「僕、アルヴィンの事なら何でも知ってるよ。ーさん、いつも柑橘系の香水付けてるよね、ーに住んでて部屋汚いけどだらしないアルヴィンには丁度良いのかもね。」
「おい..」
「先週のーさんは僕の病院の看護婦さんでしょ。僕見たんだよ、仕事帰りのーさんとアルヴィンがホテルに入って行く所。その前の」
「もう、いいから。」
「なんで?今更後ろめたさなんてあるの?」
「悪かったから」
「悪いと思ってたんだ。」

俺の背後から俺を抱きしめて浮気した女達の身辺を言って行くジュードに若干の狂気を感じた。
"不審者"というのは十中八九、こいつの事だろうと考えた。

「でもね、僕、考えたんだ。」
「...なんだよ」
「アルヴィンの浮気する女の人をぜーんぶ殺したら、アルヴィン、僕だけを愛してくれるよね」
「..冗談はよせよ」
「冗談じゃないよ?」

そういつもと変わらない口調で残忍な話をするジュード。
以前はこんな事は絶対に言わなかった。言わなかったのに。
きっと、そうしてしまったのは自分のせいなんだろう。

「俺が、悪かったから、ジュード..殺すとか言うな」
「じゃあ、僕だけを愛してくれるの!」
「あぁ、約束する」

そう言うと嬉しそうにジュードは部屋の奥へ行ってしまった。
そして帰って来た時に持っていた物に息を飲むことになった。

「ジュー..ド?」
「こうすれば、もう安心、だよね」
「おい...これ...」
「え?首輪、気にいらなかった?」
「じゃなくて...」
「だって、これがないとまた、どこかに行っちゃうでしょ?」

"ガチャン"

俺は部屋のスロープに繋がれてしまった。
そして俺はそれを付けたジュードを見上げたら、鎖ごと俺を愛おしそうに笑顔で見つめるジュードが居た。
その笑顔の中の狂気に俺はただ、ただ、呆然と見るだけしかできないでいた。





浮気性で冷めたアルヴィンのせいでジュードが病んで行く話。
なんだろう。アスベルじゃ絶対こういう話書けないのにジュードだとスラスラ書ける不思議。

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