僕は可哀想な男に恋をした。
お金だけが全てで、お金さえあれば全てが手に入ると思っている男だった。
愛すらもお金があれば手に入ると思っていた。
でも彼は気付いていない。
あの女の人達は貴方ではなく貴方のお金に恋をして愛してるのだと。

「じゃあ、アルヴィンの愛が欲しい」

情事の後に彼の耳にそう呟いた。
そうしたらまるで幼き頃の子供の恋愛のように彼は顔を赤くして視線を反らした。

「なんで目を反らすの? なんでもくれるんでしょう?」
「……それは……」
「僕にくれる事ができるの?」
「どういう事だ?」
「愛がどういうものかわかるの? 僕はアルヴィンが言う安い愛なんて欲しくないよ。もっと純粋で清らかな愛が僕は欲しい」

そういうと彼は悩む様に視線をベッドに落とした。
それはそうだろう。彼がわかるはずはないんだから。
金で手に入れた安い愛しか彼はあげた事も貰った事もないのだから。

「僕はアルヴィンを愛する事ができるよ? 金に裏切られて独りぼっちになってもアルヴィンの側に居てあげる。守ってあげる。僕の全てをアルヴィンにあげる」
「ジュード……」
「それを僕にアルヴィンはくれる事ができるの? 出来ないなら僕を諦めて」

お金持ちで人一倍プライドの高い彼の感情を逆撫でするに相応しい言葉。
彼は拳を握りしめ、怖い顔をして僕を見上げた。

「随分と挑発的な事を言うんだな」
「そんな事ないよ。ただ、アルヴィンにその覚悟があるかどうか聞いただけだよ。安い愛に空っぽの心を満たして満足しているようなアルヴィンにその覚悟があるか、ね」
「……わかった」
「何がわかったの?」
「ジュードだけを見て、ジュードの側に居て、全ての災難からお前を守る。お前の望む通りお前に俺の全てをやる。だからお前が、ジュードが欲しい」

怖い顔を次第に優しい顔にさせてアルヴィンは僕の肩を抱いてそう言った。
僕は彼のその顔に嘘はないと確かめる様に彼の顔を見つめ、言葉を返した。

「いいよ。僕の全てをアルヴィンにあげる。本当の愛をアルヴィンに教えてあげる」


あれから月日が経過して僕は街が一望できる教会の入り口に父と立っている。
この教会の扉を開ければアルヴィンが僕を待っているのだろう。

扉がゆっくりと開かれ、父と共に教会へと進みアルヴィンへと引き渡される。
一流のドレスに彼がくれた高価なダイヤが薬指で光る。
頭にはティアラの代わりに彼がくれた青い薔薇の髪飾りが美しく咲いている。

愛を誓い、僕らは教会でキスをした。

「やっと手に入れる事ができた」
「金があればなんでも手に入るんでしょ」
「そんな昔の事、もう言うなよ。わかったんだよ。どうやら心だけは金で買えないらしい」
「愛は等価交換でしか手に入れる事はできないからね」
「そうだな。だからお前をくれよ。俺もあげるから」


『Noble Heart』


「このお話は初めて人を愛した男性のお話」

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