僕がまだ子供だったあの日、僕の全てが一瞬にして消えた。

厳しい父も。
優しい母も。
僕の未来も。

全て消えた。

それと引き換えにその代わりが用意された。
僕を憎む彼だった。


『白昼メランコリー』


俺はとある小さな病院へと向かっていた。
その病院は夫婦二人で切り盛りされていたが、事故により夫婦が他界し閉院されていた。
しかしその閉院された病院が今日から開院されると聞いた。
その病院の先生は夫婦の息子と聞いた。

俺は花束を片手に抱え、その病院のドアを開ける。
ドアを開ければ、成長した彼の姿があった。

「……おめでとう、ジュード」
「アルフレド……スヴェントさんに次いで二世政治家になったってこの前聞いたよ。おめでとう」
「やっぱりお前みたいに父さんと同じ仕事を選んだよ」

「ここまで素直に言えるようになったから……悪かった、ありがとうって伝えようと思って来たんだ」
「……そんな約束覚えててくれたんだね」
「父さんの後を追う限り忘れないよ」
「僕ももう君のした事ぐらい笑えるぐらい大人になったよ、だから僕もありがとうって言わせて」


僕が父さんと母さんの後を継いだ日、僕の手には沢山のものが帰ってきた。

厳しい父さんの居たデスク。
優しい母さんが書いたカルテ。
両親を辿る僕の未来。

全て消えたと思っていた。

その代わりに用意された僕を憎んでいた彼は憎しみを忘れて僕にこう言った。
ありがとう、と。
そして やっと普通の兄弟として始める事が出来る と微笑んでいた。

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -