「僕が無くしたものを持ってる癖に、……贅沢だからね。だから嫌いだよ」
嫌っていた相手に嫌われて憎まれた。
嫌っていたのだから嫌われても憎まれても動じないはずだった。
むしろそう言われて俺の前から姿を消してくれる事すら願っていた。
けれどあいつが俺に放った言葉が耳に残り心を刺す。
俺の弱さが実の父親と母親ではないけれど、実子以上の愛を注いでくれていたはずの父親と母親を殺してしまったのだと。
俺の本当の父親として、母親としての二人を。
それを気付かせたのが、両親を失って間もないはずのあいつだと思うと自分の矮小な心が砕けてしまいそうになる程辛かった。
「もういいでしょ……僕、もう行くから……」
「……」
俺の胸を押し返してジュードは体を起こしこの部屋を出て行った。
ジュードが投げつけた言葉が脳内をぐるぐると周り、整理のつかない悩みに俺は部屋で泣いた。
あの涙は俺の涙だったのだろう。
『アルフレド、母さんアルフレドの事が大好きよ』
ジュードの言葉により、ようやく俺は父親と母親の隠してきた事を受け止めあの優しい母親の笑顔の思い出を取り戻した。
あれは紛れもなく俺の母親に変わり無かった。
隣の部屋のドアが閉まる音が聞こえ、俺の意識は回想から現実へと引き戻される。
そして、俺は自分の犯した過ちを悔んだ。
「あんなに嫌われたらもう謝る事すらできないじゃないか……俺はどうしたらあいつに償う事ができるんだ……」
今さらジュードを追いかけて謝ったとしても許してはくれないと思った。
何もかもが手遅れなんだとそう思った。
『白昼メランコリー』