僕の目の前に現れた男は間違いなく僕が恋をしたアルヴィンだった。
その姿を見て僕は彼に駆け寄った。
そして、僕は僕の後ろに居る局長の言葉を本当の意味で理解したのだった。

「アルヴィン!!」
「あ……? 誰だ?」
「アルヴィン……?」
「悪いが人違いじゃないのか? 俺の名前はアルフレドだ」
「……アルヴィン……じゃ……ないの?」

アルヴィンに瓜二つのこの男はアルフレド、そう名乗った。
絶望的な状況から彼に会えて舞い上がる喜びは一瞬にして消え、動揺させた。

「なんだ、アル坊じゃないか。それに従弟同士揃って仲がいいな」
「アル坊はやめてくれよ」
「はは、それはすまなかった」
「それはそうと、こいつは?」
「あぁ、この子は――」

僕の背後から局長はアルフレドと名乗る人物とその横に居る人と会話を始める。
僕は相変わらず動揺していたが、目の前に居るこの人物がアルヴィン以外だとは考える事が出来なかった。
ただ彼と話したくて、あのアルヴィンがくれたリリアルオーブを彼に見せつけた。

「これ……」
「なんだ? これは……っ!」
「あっ!」

僕が彼にリリアルオーブを差し出し、それを見た彼がポケットから何かを取り出した瞬間に僕らが手に持つリリアルオーブは触れても居ないのに弾き出されるように地面へと転がった。
そしてそれは僕が拾う前にもう一人のアルヴィンに拾われた。

「何でお前がこれを持っているんだ?!」
「それは……君が、くれたから……」
「これは俺があの糞みたいな世界に流れ着いた時から肌身離さずずっと持っていたものだ!」
「じゃあ、僕のは何処に行ったの?! あれだけが……アルヴィンが残した物だったのに……」
「それでもこれは確かに俺の物だ。悪いがお前に渡す事はできない」
「そんな……」
「はいはい、初対面で喧嘩は大人げないよーアルフレド」
「ジュード君、アルフレドなら俺が呼べばいつでも会える。だから今日は会社に戻らないか?」
「……」
「アルフレド、すまない。また今度会いに行くよ」
「……」

僕は局長に手を引かれクランスピア社への道を進んだ。
その足取りは重かった。

彼とまた出会う事が出来たのに、その出会いは僕にとって嬉しいものではなかった。
全く持って嬉しくない、そう言ったら嘘になるけれど僕はアルヴィンから貰った大切なものを失ってしまったのだから。

『ほら、ジュード。こうやって術技を覚えるんだ。その為のリリアルオーブだからな』
『じゃあ、そこに居るオタオタでも倒しに行こうぜ。大丈夫だって、俺が居るから』

アルヴィンの優しい声が脳裏に思い浮かび涙が溢れ出る。
その声と同じ声で同じ顔で僕に冷たく当たった彼は局長の言う通り僕と思い出を作った人物では無かった。
その事実に僕はただ涙を流し呆然とするしかなかった。


『巡る器の還る場所 5』

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