死ネタに注意して下さい。
僕を愛するアルヴィンと、アルヴィンに恋する僕の日常は生きて来た16年間とは比べ物にならない程に充実していた。
少しでもアルヴィンの理想の僕になりたくて沢山の事を覚えた。

「いいか、包丁はこうやって握って切れよ」
「うん……!」

「俺、リリアルオーブの余りまだあるから簡単な技を教えてやるよ」
「うん!」

何も出来ない僕にアルヴィンは色々な事を教えてくれた。
一つ料理を覚えて喜べば、アルヴィンも喜んでくれた。
一つ技を覚えて喜べば、アルヴィンも喜んでくれた。
そんな些細な事が僕にとってはとても嬉しくて、僕は初めて笑った。
笑うとアルヴィンが嬉しそうにするから、僕も嬉しくなった。
だからこんな日々が永遠に続けば良い、と思い偽物である事もエージェント達の事も忘れたいと思っていた。

しかし、この安穏の日々はいつまでも続く事はなかった。
僕とアルヴィンが住む小屋に、僕を連れて来たエージェント達がやってきたのだった。

「ジュード様、探しましたよ……さあ、時歪の因子を壊して私達の世界に帰ります」
「本来ならば見つければすぐ射止めますが、貴方を見失ったまま帰れば我々は社長に合わせる顔がありません……」
「おい、ジュード……こいつらは……?」
「……僕は帰らない、……お願いだから僕を連れ戻さないで……!!」

エージェント達はまた僕に訳の分からない事を言い、僕とアルヴィンを引き離そうとしていた。
アルヴィンと離れたくない僕は彼等に反攻するが彼等が僕の意思を受け入れる事はなかった。

「ジュード様、この世界はもう消えるんです。その男も。それがこの世界の在り方なんです。だから我慢して着いて来て下さい」
「お前等……ジュードを連れて行くっていうのか?! こんなに嫌がっているじゃないか!」
「手荒な真似はしたくありません、ジュード様。さぁ、こちらに」
「嫌だ……!! 僕は、アルヴィンと離れたくなんかないんだ……僕はアルヴィンと一緒に居る、消えるというなら僕も一緒に消して……!」
「ジュード様、これが私達の仕事なんです」

僕は嫌だ、嫌だと泣きながらアルヴィンにしがみつき意地でもこの手を離したくはないと思っていた。
しかし現実は無情で、後方から鳴った銃撃音が僕らを引きはがした。
アルヴィンにしがみつく腕と身体は血で真っ赤に染め上がり、恐る恐る目の前のアルヴィンを見れば被弾し煙と共に大量の血液が流れていた。

「ジュード様、時間を差し上げます。……どうかわかって下さい、ここは分史世界なのです。いずれは消滅する世界です。貴方は私達の世界に戻らなくてはなりません」
「……ア……ル……ヴィ……ン……?」

アルヴィンはそのまま床へと崩れ、倒れてしまった。
僕は起こった事全てを信じる事ができずに倒れ込んだアルヴィンの顔に手を当てれば冷たかった。

「はは……ジュード、……話よくわかんね……けど……、お前は……俺の知ってるジュードじゃないんだな……」
「ア……ルヴィン……嫌だ……よ!! 僕は……君のジュードで居たかった……!!」
「……嘘ばっか吐くと……俺みたいになっちまうぞ……、でも……お前のお陰で……許されない……けど……少しは贖罪できた気はするよ……サン……キュな、ジュード……」
「アルヴィン!! 目を覚ましてよ……!! ねえ……!!」
「はは……でも、お前も……ジュード…………なんだ……な……」

彼が最後にそう呟いて静かに目を閉じた。
冷たいアルヴィンの身体を揺さぶり何度も何度も声を掛けるがアルヴィンが目を覚ます事はなかった。
背後に居たエージェントが『行きましょう』と手を差し伸べるが、その手を振り払ってアルヴィンの身体を揺らす。
次の瞬間僕の鳩尾にエージェントの拳が入り、僕の意識はこの小屋の中で薄れた。


『巡る器の還る場所 3』


アルヴィン、君の事が大好きだった。
君の想う僕になりたかった。

君と出会って、初めて笑った。
君と出会って、初めて愛しいと思った。
君と出会って、初めて生きてて良かったと思った。

そして、初めて泣いた。

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