「アルフレド、今日の俺は機嫌が良い。だから特別に良い物を見せてやろう」
「ありがとう、叔父さん」

父さんの弟にあたるジランド叔父さんが研究の過程に大精霊を見つけたとして功績を納めた。
衰退の域にあるエレンピオスを持ち直すには心許ないが大きな資源には変わりない、そう言われもてはやされていた。
そんな叔父は俺を連れて誰にも見せる事のないアスコルドの中央ドームへと連れて行ってくれた。

「こいつが俺が見つけた大精霊だ」
「……!」
「どうだ、凄いだろう。まぁお前のようなガキにこいつを見つけた素晴らしさはまだわからないと思うがな」

大精霊から溢れ出るマナをただ、綺麗だと思った。
のちに考え直すととても残酷だという事に気付いたけれど。

この出来事から俺は警備を隙を見ては中央ドームに行く事が多くなった、もちろん27歳になった今でもそうだ。
元々叔父が発見し、アスコルドに連れて来られたので施設内で見つかっても咎められる事もない。
ただ、中央ドームだけはそれなりの権限を持つ人間しか入れないのは変わらなかったので不法侵入と言われればそうなのだろう。

ただ今日だけは施設内がいつもと違っていた。
施設一帯のブレーカーが落ちたのか真っ暗で制御システムも動いているとは言えず全ての職員が制御室のドアを開ける事に懸命になっていた。
その横で叔父が怒鳴り声をあげてGHSで連絡を取り合う様子を滑稽に思い、制御室の前を通過して中央ドームへと向かう。

『人間の姿になったとは言え、用心に超した事はない。ここを無事に脱出できそうか』
『僕の姿を変える時に一時的に制御されている以上のマナを出して、きっと此処の機器系統は壊れたはずだから大丈夫だよ。まさか貴方が僕を助けてくれるなんて思わなかったから嬉しいよ』
『私は精霊の主だからな』
『ありがとう、でも此処でお別れなんだよね』
『その身体はお前を形成した元素を組み替えて人間にしたものだ、しかし私の身体はこの世界のマナを使って今ここに居る。残念だがお前を逃がす事まではできないようだ』
『仕方ないよね、ありがとう。"マクスウェル"』

中央ドームから聞こえる、男の声と女の声。
中央ドームの機器系統が壊れているのは他と動揺で扉を開ける事はできないが、肉声だけは聞く事ができた。
信じられないような事だけれど、精霊達の会話だと察する事ができる。
そう、ここの機器系統を破壊したのはここに捉えられていたあの大精霊だと。

『さぁ、僕も此処が混乱しているうちに脱出しないと……』

ドームに響く声が扉越しに漏れ、コツコツと足音が俺の居る扉に近づいて来る。
おそらくこの施設の機器系統を狂われた力で同じように目の前の扉の制御システムを狂わせ、俺の前に現れる。

「……!」
「……!?」

俺の前に現れたのは少年と青年の中間ぐらいの青少年というのが的確な表現な"人間"だった。
俺も勿論驚いたが、目下の青少年も驚いていてお互いに言葉を詰まらせる。
ただあの綺麗な大精霊が人の形を模しても綺麗なままでそれに見とれてしまっていたのかもしれない。

「あ、の……!僕、この施設で迷っちゃって……、だから……!」

青少年は俺に向かってそう話出し、俺の横を通り抜けようとする。
俺はすれ違い様に少年の腕を掴み、脱走を阻止させる。
すると青少年は振り返り俺を凝視した。

「何処行くんだ、精霊さん?迷ってたなんて嘘を吐かなくていいんだぜ」
「……!」
「"なんで知ってるんだ"って顔だな、心配するなよ、俺は別におたくをあの装置に連れ戻したい訳じゃない」
「……じゃあ、手を離して」
「それは出来ない、おたくが居なくなると困るから」

俺がそう言うと青少年は困った顔をし、俺の掴む腕を振り払おうと力を入れる。
勿論開放しようとは思わなかった。
それは俺が小さい頃からこの"精霊"に魅了され続けて来たからなのだろう。
施設は兎も角、俺の眼中から居なくなる事だけは嫌だった。

「……僕を、離して。僕はここを出なければマナが枯渇して死んでしまう」
「それは俺も同感だ」
「なら……!」
「俺はおたくのマナだとか資源だとかに興味はない、ただ手の届く所にあればそれでいい。これって利害が一致してると思わないか?」
「……それが君に何の得があるの? 見世物小屋にでもするの?」
「アイツと一緒にするなよな、ただ俺はおたくが綺麗だと思っただけだ。なんならあれを壊した力で俺を壊してもいいんだぜ」
「……危害を加えないなら、少しくらいなら一緒に居てあげる」
「あぁ、それでいいよ」

青少年の腕を掴んだまま、着た道をそのまま引き返し列車乗り場まで戻る。
しかしこの青少年はGHSすら所持をしていない、列車に乗る事は不可能だった。

「お、スヴェントさん所の。今発券機が壊れてて直すのには時間掛かるんだが列車が到着しちまって……」
「今日どうしても急ぎの用事があるんだが、乗せてくれないか」
「まぁ、大丈夫だろう。どうみたって多重債務者や犯罪人じゃないしな。……見ないけれど、連れかい?」
「……」
「あぁ、そうだよ。知り合いの子供なんだが……忘れ物を届けに来て迷子になっちまったみたいでさ」
「まぁ、大丈夫だな。あと少しで発車するから乗ってしまってくれ」
「サンキュ」

アスコルドの機器系統の異常は隣接する駅にまで被害が及んでいるようで、難無く列車に乗る事ができた。
アスコルド発の列車なので俺とこいつ以外の乗客は居ないようだった。
列車乗っている間、隣に居る青少年は下を向き口を固く閉ざしていた。

「どうしたんだ、だんまりで」
「……あの人間が君の事をスヴェントと言った。僕を捕らえた人間もスヴェントと名乗った。本当に僕に危害を加えない……?」
「だからアイツと一緒にするなって言っただろ」
「僕にとってはそう変わりはない……」
「ならあいつみたいに手酷く捕まえられた方が良かったか、そっちの方がわかりやすいか?」
「……!」

座席に座り俯く青少年の肩を掴み座席に押し倒すと青少年は驚き身体を硬直させた。
あれだけ綺麗だと思って通い詰め俺を魅了した精霊が俺の腕の力一つで怯えていると思うと何故だか高揚した気分となる。
今の俺は綺麗なものを独り占めしたい支配欲にかられていた。

「……うそつき……」
「俺は嘘なんて言ってない」
「じゃあ、この状況は何?!」
「ただ欲しい、それだけだ」
「んっ」

そのまま青少年の唇にキスを落とした。
青少年は俺から抜け出そうと力を入れているが、微々たる力に過ぎない。
力が弱い事を良い事に片手で身体を押さえ込みもう片手で着ている衣服を脱がし繋がった唇に舌を捩じ込めば反攻はして来なくなった。

「――っ、ふ――」
「……最初の強がりはどうしたんだ?」
「肉体ぐらい君にあげるよ……、でも心は渡さない。そう思ったら平気なだけ……」
「随分と嫌われたもので」
「……嫌わない方が可笑しいでしょ?」
「俺はただ、側に繋ぎ止めたいだけなんだけどな」

身体を起こして、青少年の膝を持ち上げ露になった後穴に顔を近づけ舐める。
片手で性器をゆるゆると扱き、もう片手で舌と共に後穴を弄ると青少年は浅い呼吸を繰り返した。
一応人間の身体の機能は正常なようで、性器を扱く指先には透明な液体が纏わり付いていた。

「ん、はっ、あ……な、んで、こんな無意味な事、を……」
「人間の醜い欲求なんて理解不能だろ、精霊さんには」
「あ、の人間は……そ、んな事……」
「アイツと俺とじゃお前に対する欲の掻き方が違うからな」
「どう、違う……の……」
「端的に言えば、おたく個人を必要とするかおたくの能力を必要とするか」
「……君は……僕が必要なの……?」
「あぁ、必要なんだ。だから、くれよ」
「へっ……っ!?」

そのまま青少年の中に性器をゆっくりと入れる、慣らしはしたが狭い事には変わりなかった。
青少年は苦しそうに短い声で呻き、目尻から涙を流して耐えていた。
その涙を舌で掬い、青少年の性器を握りゆっくりと腰と共に律動を始める。
しばらくすると性器に熱が溜まり、青少年の頬は赤く染まり短い声を漏らす度に後穴を締め付ける。

「ふっ、あっ、んうっ」
「まだ苦しいか?」
「ひっ」
「これで俺がおたくの能力なんかよりおたく個人が必要だってわかってくれたか?」

律動しながら意地悪気にそう聞くと青少年は首を縦に振って"わかった"と俺に伝えた。
俺はその返答に満足して青少年の性器を扱く手の速度を早め熱の開放へと誘った。
最後に先端を爪先で引っ掻けば吐精と共に後穴を締め付け俺自身の熱も後穴へ注いだ。

「……っ、あっ……はっ……」
「なぁ、わかってくれたか」
「……君が……所構わず人を襲うような人だって事はわかったよ……」
「随分可愛らしくない返答をするんだな」
「事実だと思ったから」
「あぁ、そうだよ。俺はおたくを資源だなんて思ってない……それだけはわかってて欲しい」
「君は僕の存在が必要なんだね」
「あぁ」
「……君は、僕に恋しているんだね」

苦しみながらも青少年は僅かに微笑みそう俺に言った。
あぁ、たしかにこれは恋だったのかもしれない。そう感じた。
しかも、独占欲も支配欲も強いこの恋は中央ドームで綺麗だと思った時からの恋なのかもしれない。

これは俺にとって『最初で最後の恋』なのだろうと悟った。
だって精霊の姿でも人間の姿でも変わりなくこんなにあいつが欲しいと思うのだから。

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