終盤の部分で原作より随分後の時代の話が入っていますので、注意して下さい。
原初の三霊、クルスニクの一族に課せられたゲームの阻害要員。
カナンの地の扉の奥で瘴気に灼かれ続ける友人を想い、ゲームの終わりを待つ精霊。

ビズリーを介して使われたエルの力はクロノスを蝕み、カナンの地にて倒れた。
その介した力を使ったビズリーは僕達に挑み、自らの意思で死を選んだ。
後は扉が開き、彼と幼い彼女の願いをオリジンへ伝えれば滞りなく世界は生かされるのだろう。
端で倒れる彼が望もうと、望むまいと。

「クロノス、怪我を……」
「人間風情に心配される程愚かではない……」
「僕らは精霊の力を借りて精霊術を使ってるんだ、大精霊でも精霊の貴方にこの力で癒せない事はないと思うんだ、だから」
「……」

クロノスの傷へ手を添え、術を唱えれば彼の傷は癒えていく。
何故、自分がこんな事をしているのかわからないけれど『放っておけないから』そう考えれば自然かと思えた。

「貴様……人間は、やはり愚かだ」
「愚かでも、放っておく事なんでできないんだ。僕は精霊と共存して生きて行く世界を作りたいんだから」
「笑わせるな」

笑わせるな、そう言って彼は顔を顰めた。
人間嫌いな彼に認めてもらえるなんて思っていない。
ただ、そんな彼を放っておく事なんて僕にはできなかった。

「それでも、僕は諦める事なんてできないんだ」
「このゲームがあってもなくても、この世界はいずれ滅びる。人間の意思によって」

添えた手を払われて、彼はこの世界の終わりをわかったかのように僕に言い放つ。
何故彼がこんなにも人間に幻滅しているのか理由さえもわからない。
けれど僕が彼のような立場だったら、そう考えたらなんとなく分かるような気がした。

時を自在に操る彼はひとりぼっちなのだろう。
時を止めれば自分だけが生き、時を遡ればわかりきった返答に対象に生を感じる事ができないのだろう。
そしてオリジンは扉の中で瘴気に灼かれ、マクスウェルは断界殻に閉じこもる。
残された孤独の彼は、親友を瘴気で灼かせる人間が憎くて憎くてたまらないのだろう。

「滅びなんてさせないよ、僕は精霊と人間が共存する世界を作ると約束したんだから」
「……愚かだ、貴様もマクスウェルも……」
「その時には貴方の憎しみが和らいで少しでも人間を好きなってくれると嬉しい」
「それでも時間を司る力がある限り人間を生命持つ物と思えまい」
「だったらその時は貴方を召還して貴方のクロノスの世界を一緒に見るよ」
「戯れ言を。大精霊を召還など人間にそんな事が出来る訳ない」
「やってみなくちゃわからないよ、だから待ってて欲しいんだ」

そう言うと彼は開いた扉、親友オリジンの元へと行ってしまった。
彼等が魂の浄化に一段落付き、この世界に降り立つ事が出来る日が来るのなら生に満ちた世界をミラと共に見て欲しい。
貴方の大切に想う親友の側で少しでも人間の事を好きになってくれたら僕は嬉しい。


『追伸、人間は好きになれましたか』


「この世界はあの時と違い、命に満ちあふれている……これがあの人間が望んだ世界か。あれから幾年が過ぎたのだろう、人間の器の寿命は限られているというのにあんな無駄な約束を……」
「ねえ、マクウェル、彼がクロノス?」
「あぁ、そうじゃよ」
「貴様は、旧マクスウェル。そんな石になりながらも生きながらえて居るとはな」
「こいつの子孫達に守られてきたからな、クロノスが呼ばれたのも"あれ"がわしを呼ぶ術式を変えて考えられたものだ」
「懐かしいものだな」
「ねえ、クロノス。人間は好き?」
「……突拍子もない事を」
「この術書を見つけた時、リーゼ・マクシア語でそう聞いて欲しいって書いてあったんだ」
「あぁ、少なくとも約束を守れる事は賞賛に値する」
「……? それって好きって事?」
「貴様の好きな様に捉えればいい」
「うん……!」

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