チャプター5のイベントでアルヴィンが同行して尚かつ分史世界に飛ばない改変を加えています。
アルクノア。
リーゼ・マクシアという異界の地へ堕ちて帰れなくなった人間達の集団。
しかしその迷子の集団はエレンピオスに帰ったというのに活動を止める事はなかった。


『きみを、まもりたい』


ドヴォールの裏路地に魔が潜むと噂されジュード、ルドガー、エルと共にその地へ向かう。
この土地はブラートと呼ばれる自治組織に支配されていて治安は悪い。
そんな場所に未成年を連れて行くのは快くはなかったがこいつらは俺が止めても止まらない。
それを分かっていたので口出しをする事はなかった。

「それにしても、何故アルクノアは精霊の化石を……」
「兄さん、精霊の化石って言ったか」
「精霊の化石を取り扱ってるんですか?!」
「あぁ、微精霊クラスだけどな」
「最近、精霊の化石を集めてる集団って聞いた事ないですか」
「あぁ、アルクノアだろ」

口出しをすれば良かったと後悔する事が直後に起こる。
闇に潜むブラートの連中がジュードに銃を突きつけたのだ。
傭兵をしていた癖にこの異様な空気に気付けなかった事に悔いた。
何よりも、俺の大事な人をブラートは銃を突きつけたのだ。悔やむにはいられなかった。

「なぜジュードを?!」
「それは、こいつが融和政策の片棒を担いでるからだ!!」
「っく!! うっ!!
「ジュード!!」

融和政策の片棒を担いでると言われ、殴られ蹴られるジュードの姿に正気ではいられなかった。
守りたいと願ったジュードが目の前で苦しんでいるのに何も出来ずに居るのが苦痛だった。
俺がここで銃を持てば、周りの連中はそこで苦しんでいるジュードを遠慮なく撃つだろう。
そして一歩でも動けば奴らは俺の隣に居る泣きそうなエルさえも容赦なく撃つだろう。

「お前等もどうせリーゼ・マクシア人……あんたは、スヴェント家当主のご子息様じゃないですか、アルクノアの貴方がリーゼ・マクシア人と共に? それもこの男と共に居る?」

ジュードに話を吹っかけて来た男が俺の顔から素性を語る。
そうだ、あの時ジランドは無線でジランド・ユル・スヴェントそう名乗った。
だからアルクノアの一人、そう捉えたのだろう。

「あぁ、アルクノアだった。ただ家に帰りたかっただけのアルクノアだ」
「それが今じゃ融和政策の片棒を担ぐとは亡き叔父君も泣いていますよ」
「……勘違いするなよ、俺は確かにアルクノアだった。帰りたかったそれだけだ。そのアルクノアにお前等みたいな連中が集まって更におかしくなったんだよ。こんなのはリーダーは望んでいないはずだった。こういうのはただのテロリストって言うんだ!!」
「なら、言葉は選ばれた方がよろしいかと思いますよ」

男の銃が再度ジュードに向けられる、ただその男の足下には見慣れたナイフが刺さっていた。
このナイフはローエンのものだった、つまりまだ俺達にはこの状況から脱する術があるらしい。
ナイフはジュードを狙うブラートの足下付近を円で囲っている。
つまりあそこで踞るジュードを動かせる事ができるならまだ勝機がある。

『ルドガー、あと数秒後に俺はジュードを救う。ほんの数秒だけエルを守り抜いてくれ』
『?』

『心配するな、打開策は足下にもう用意されてる』

俺は素早く銃を天へ向かって打ち、反射的にジュードから視線を削ぎ踞るジュードを抱えブラートから距離を取る。
ナイフから離れたと同時にそのナイフの点と点を結ぶように魔法陣は描かれブラートの行動は止まった。

「こんなのが使えるなんてリーゼ・マクシア人は化け物だ……」
「ちっ、出直すぞ」

「ほほ、危機一髪ですね」
「あぁ助かったぜ、ローエン」
「皆、ありがとう……」
「アルヴィンさん、ジュードさんの手当をしてあげてください。その間に私はこのお二方に話を伺いたい事がありまして」
「……わかったよ、ルドガー。俺達と旅をしてきた仲間だ。信頼はできる」
「あぁ、わかったよ。それよりジュードを早く治療してやってくれ」

ドヴォールの宿屋に運べば、頬は腫れ腹部は青くなっていた。
俺がもっと注意を払っていればこんな事態に陥る事は無かったと後悔がまた募る。

「アルヴィン、大丈夫。自分で治癒できるよ」
「そうだったな」
「それより、僕はアルヴィンが申し訳無さそうにしてる方が辛いよ」

ジュードは自分の腹部に手を当て、治癒術を発動して瞬時に癒すと俺に向かってそう言った。
ジュードがアルクノアに狙われてる事は1年前から既に知っている事だったのに、注意が散漫だった自分に嫌気が刺すのだ。
そしてこうしてジュードが傷ついてるとなれば後悔しない訳がない。

「悪い」
「アルヴィンが気に病む事じゃないし、……理解して貰えないのは僕が責任を果たせてないからだから」
「俺はお前が責任を果たそうと努力をしてるのを知ってる、だからそんなお前を守りたかった。だけど動けなかった、痛い思いをさせてしまった」

ジュードが俺の頬に当てて、俺の頬が暖かい光に包まれる。

「アルヴィンはそれでも僕を守ってくれた、顔に擦り傷できちゃってるよ?」
「こんなもんたいした事じゃねーよ」
「ありがとう、アルヴィン」
「もうジュードをこんな目には絶対に合わせない、絶対に守ってやる」
「……アルヴィン」

ジュードを抱きしめると、ジュードの掌がそっと俺の背中を撫でる。
ジュードの傷を手当するはずが、逆に俺の独りよがりな心が癒されているようにさえ思えた。

「僕は責任を果たすまで死なないし、連れ去られたりもしない。だから心配しないで」
「……責任を果たしても死なないで欲しいな」
「それから先もアルヴィンが守ってくれるんでしょ、だから死なないよ」
「あぁ……」
「だからそんな顔をしないで、アルヴィン」

自分が一番苦しんでいる癖に、このお人好しは俺を励まそうと必死なんだ。
だからこそジュードを好きになったし、何からも守りたいとさえ思えた。

「はは、治療しようとしたのに優等生に慰められる事になるなんてな」
「本当にそうだよ」
「だけど、お前のそういう所が俺は好きなんだ。ジュード」
「ア、アルヴィン……いきなり恥ずかしい事言わないでよ……!!」
「だから守るよ。これからも、この先も。な」

そんな、大好きなジュードを きみを、まもりたい。
アルクノア、そんな名前が歴史の海に沈むまで。
君を、守りたい。

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -