嘘を吐く事を止めて、ユルゲンスと手を取り合い商売を初めて1年が経過した頃だった。
いつも通りへリオ・ボーグの保管庫で卸し先への荷物を振り分けていた時この施設を乗っ取ったとの犯行声明が聞こえた。
その組織の名前に舌打ち一つして外へ飛び出せば見慣れた姿が一人あった。


『恋に気付いた一年後』


久々の再開を喜ぶ事もないまま事態への対応へと駆け回る羽目となった。
そしてかつての仲間と敵と新しい仲間との旅が始まった。

「ジュード!!」
「アルヴィン!!」

再び名前を呼び合ってリンクを結び、アローサルオーブで過去の技を覚え終わる頃には昔のような息の合った技も出せるようになった。
こういう風にジュードと再び共闘する日が来るとは思っていなかったからか何処か不思議な気持ちがあった。
そう、エレンピオスに20年振りに帰ったあの日みたいな気持ちに近い。
出生の地と20年断ち切られていた俺には縁遠かった懐かしいという感情。

「上出来だね!」
「特上出来だよ」
「アルヴィンとこういう風に闘うのもなんか懐かしいね」
「あれからアルクノアと闘った時もやっただろ?」
「何て言うんだろう、あの時と違って……こう皆で旅をしている最中で闘ってリンクを結ぶって1年前以来でしょ?」
「たしかに飛天翔星駆で持ち上げる時重くなったもんなー」
「え? そうかなあ、食事には気を配ってるんだけど」
「嘘だよ、嘘。つか逆に痩せたんじゃねえのか。バラン人使い荒いしな」

そういえば共鳴術技を考えるのも苦労したよなあ、なんて昔の事を次々を思い出す。
苦労、と言いつつもあいつらの事裏切りながら闘っていた俺にあの頃を懐かしむ事が許されるかわからない。
美談で終わる話でもなければ、思い出したくない事さえもある旅だった。
けれど俺には必要な旅だったし、生き方を変えるきっかけになる出会いだったと思う。

『わかれよ!お前が目障りだったんだよ!ずっと!頼むから消えてくれよ!優等生!いつもみたいに受け入れろよ!』
『消えられるわけないだろ!こんなことで!』

生き方を変えるきっかけ。
後にプレザやエリーゼの励ましもあったが、俺の生き方を変えるきっかけはあの戦いだったと思う。
今思えばこんなに平然とリンクを結び親しくしているジュードとは1年前熾烈な戦いをした事を思い出す。
あんなに酷い事を言い、互いがボロボロになるまで戦い、ジュードに正されたあの日は今思い出しても辛いものだ。
でもあれを乗り越えて今のこの俺があって生活があると思うとジュードには感謝はしていた。
勿論姫様にもレイアにもじいさんにもミラにだってそうだ。

「アルヴィン、何か考え事?」
「ちょっとな」
「ふふ、昔ならなんでもない。なんて言ってたのにね」
「からかってるのか」
「からかってなんかいないよ、ただ本当に嘘を吐いてないんだなって」
「あぁ、裏切る事も嘘を吐く事ももう面倒にしか思えないからな」

ただ謝罪はしても、感謝を言う機会だけはなかったと1年前を思い出す。
感謝を言うような柄じゃなかったのもあるが、それは少しだけ後悔していた。
ただ俺の事を友達と言ってくれたあいつに『サンキュ』と伝えるだけで良い話なのに。

「ジュード」
「どうしたの? アルヴィン」
「1年前の事なんだけど」
「もしかして何か思い返して謝ろうとしてるなら、いらないよ」
「1年前はただ謝罪しようと必死だった、でもよく考えたらおたくにはありがとうの方が正しいなと思って」
「うん、僕もその言葉の方が嬉しいよ」

何故今こんなタイミングでジュードにこんな事を伝える気になったのかはわからない。
きっとジュードとリンクを結んで昔と同じように技を出せるようになってその時の事を思い出したからなのだろう。
思い出さなければ永遠にジュードに伝える事はなかったのだと考えると痛ましい過去でもたまには振り返るものだと思った。

「僕の方こそね、アルヴィンにお礼が言いたいんだ。ペリューンで僕の気持ちを汲んでくれた事、凄く嬉しかった」
「そりゃあこれだけ長い時間一緒に居るから嫌でもわかるよ、おたくの考えてる事は」
「そうなんだね、なんか嬉しいよ」

ジュードに感謝され、今更ながら自分が自分らしくない事に気付いて急に照れくさくなる。
それはジュードも同じなようで目を伏して顔を赤くしていた。
リンクと動揺に途切れる会話が何故だか寂しくて会話の内容を探す。

「そういえば、まだその服着てくれてんだな」
「うん、アルヴィンが買ってくれたから」
「なんかバランにセンス悪いとか言われてないか?」
「言われてないよ、ただ『アルフレドが服をプレゼントするなんて、独占欲の強い恋人みたいな事するんだな』なんて言ってたよ」
「バランの奴……」
「『なんだかんだ言ってアルクノアの情報を掴んで助けに行くぐらいだからね』とも言ってたんだけど、この服と何か関係あるの?」
「……!」
「アルヴィン?」

ジュードの言うバランの言葉が胸に引っかかり途切れた俺とジュードの会話。
それすら気にならない程に俺は今更ながら気付く事のできなかった想いに気付いてしまった。
もしかして俺は--。

「はは、なぁジュード。ジュードは俺が考えてる事がわかるか?」
「わかる時はわかるけど、悩んでる時は何に悩んでるかわからない時があるかな」
「俺、さっき長い間一緒に居るからわかるっつったけど違うみたいだわ」
「そうなの?」
「もっと他に理由があったみたいだからな」

ジュードの頭を撫でるとジュードは教えてと言わんばかりに頭を傾げたが『まだ内緒だ』そう言ってやった。
バランの言葉を聞いて、俺はたしかにそうかもしれないと思ってしまった。
もしかしたら1年前からずっとそう思っていたかもしれない。
伝えたい言葉は感謝だけじゃないって事を。

「まだ内緒って事はいつかは教えてくれるの?」
「あぁ教えてやるよ」

この気持ちが本心だと気付いたらジュードに伝えようと思う。
感謝の思いに隠れて気付けなかったお前が好きだという想いと言葉を。

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