僕の趣味は読書だった。
その趣味は間違っても賑やかで騒がしい場所で勤しむ趣味ではないと僕は思ってる。
だから今の状況はとても適切ではないし、読書が捗っている訳でもない。
何が言いたいかというと、困っていた。
だから僕は静寂を求めて部屋を飛び出した。


『青少年Jの安息』


「急に呼んで大丈夫だったかい」
「丁度休んでた所だったので大丈夫ですよ」
「先ほど街に仕入れの馬車が来て、君が探していた本を見つけたんだよ」
「もしかしてあの医学書ですか?」
「そうだよ、君の勉学が少しでも捗るなら早い方が良いと思ってね」
「ありがとうございます……クレインさん!!」
「そんなに喜んで貰えるなら急いで電話して良かったよ」

あの僕の前で口論を繰り返す2人を置いてカラハ・シャールに来て良かったと思った。
クレインさんは静かで落ち着きが合って僕の身の回りの大人と思える大人だったからだ。

「何ならここで読んで行くといいよ、君ならすぐ読み終えるだろう」
「でも仕事の邪魔にならないですか……?」
「大丈夫。ローエンもドロッセルも居るからな。あと君が好きそうな紅茶が手に入ったから用意するよ」
「そんな、クレインさんがしなくても僕がしますよ」
「いいんだよ、丁度暇を持て余していた所だから」

そう言ってクレインさんは席を立ち僕の為にと紅茶を用意した。
あの大人2人は無い配慮に感動しつつクレインさんが僕の為に見つけた本を読み始める。
クレインさんは決して僕の邪魔をせず、この落ち着いた空間に喜びさえ抱いた。

「……ふう、やっと読み終わった……」
「どうだったかい」
「とても勉強になりました、クレインさんに頼んでおいて良かったです」
「また君が読みそうな本があれば連絡するよ」
「ありがとうございます、こんな遅くまですみません……」
「君は気にしなくていいんだよ」

クレインさんは無くなりかけていたカップに紅茶を注ぎニコニコとしていた。
アルヴィンやガイアスと居る時間からは想像ができないこの穏やかな時間。

「来たときは随分疲れていたようだけど、今は大丈夫そうだね」
「御陰様で、煩い人が多いと大変です。ガイアスは煩くはないんだけど、天然だから……」
「ならいつでもここに休みに来ていいんだよ、僕とこの街が君を歓迎するよ」
「でもクレインさんは領主なんだから忙しいですよね」
「大丈夫だよ、こうして君を持て成すだけの時間はあるから。それに君が来てくれるととても嬉しいよ」
「クレインさん……」
「だからジュード、ここを3番目の家だと思っていいんだ。僕はいつでも君の帰りを待ってる」

耳元でそう囁くクレインさんの言葉に顔が熱くなるのを感じた。
僕が欲しい物を全てくれる彼に惹かれた結果なのかもしれない。
きっとカラハ・シャールに日々訪れるようになる頃にはこれは恋に変わっているかもしれない。
そんな気がした。

「旦那様、ジュードさんがガイアスさんとアルヴィンさんの相手をしてお困りな様ですよ」
「よくそんな情報が手にはいるね、ローエン」
「えぇ、ガイアスさんが通話を切らずにジュードさんの元へ行ったものですから。それにガイアスさんはメールでさえうっかり私をCCに入れてしまうみたいで」
「教えてあげればいいものを」
「そういう所が陛下の素敵な所じゃないですか」
「ならその宰相が僕にそんな情報を流していいのかな」
「私の主人は旦那様ですし、それに私はジュードさんを幸せにするのは旦那様だと思っていますから」
「そんな気ももう使わなくていいみたいだよ、僕はもう彼を手に入れるのだから。誰にも負けないくらい彼を大事にしてみせるよ」

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