高度な工業技術、通信技術、そして黒匣を用いこの国は成長と共に衰退した。
そんな世界で個人はGHSから個人情報を常に監視され生きている。
良いも悪いもなくそれは自衛を含めこの世界に必要なツールだった。

「お連れの方のGHSを端末にアクセスして下さい」

彼女はGHSを持っていない。
この世界で生きる為のツールを渡されていない彼女はこの世界で人間としては扱われない。


『脱衣少女に動揺男』


「あぁ、GHSを忘れたんだよな。すまん、俺の切符は破棄してくれ」
「GHS...?」
「ジュード。とりあえずここから離れよう」

電車に乗る事さえGHSを所持していない彼女には許されなかった。
異界炉計画を推進するこの世界はリーゼ・マクシアの人間を人間とすら考えていない。
たとえ脱走が出来たとしても彼の地人々は何処へも行けない、それがこの世界の理不尽さ。

「ジュード、これ見た事あるか?」
「..ないよ」
「これはGHSって言って、これで人間の移動を含めた様々な情報を管理してる」
「それを持たない僕達リーゼ・マクシア人はこの世界では人ですらないんだね」
「...そうだ。だけど、それでもいつかお前の世界に返してやりたい」

悲しそうな俯くジュードの肩を持つぐらいしか今の俺に出来る事は少ない。
しかし電車に乗れないという事はジュードを匿う為の家にすら帰れない。
物を買う事自体は俺のGHSでどうにかなるが、宿に泊まるにはそれぞれのGHSを提示しなければならない。
陸路を行くにしても日が沈んでいる今はどうにもならない。
八方ふさがりも良い所だ。

『そこのお嬢さん、それ買うなら先にここにGHSアクセスさせてくれよ』
『...!!』
『おい!!誰か!!盗人だ!!GHS持ってねえから浮浪児かリーゼ・マクシアの脱走人だ!!』

発券場の前で行き先を考えていると、向かいの売店で何か騒ぎがあったようで怒号が響く。
GHSを所持していない所為で食べる事もままならない彼女は物を盗み逃げ出した。
駅の警備員に追いつめられる彼女の先行きは悲しいものなのだろう。
しかし今の俺では彼女まで救う事はできない、できなかった。

「浮浪児ね...」
「アルヴィン...?」
「ジュード、電車には乗れないから。明日陸路から家に戻ろうと思う。だけど今日は遅いから何処かに泊まろうと思うけどいいか?」
「僕は構わないよ」
「ただ、普通の宿だとGHSを出さなきゃいけないんだ。嫌かもしれないけど何もしないって約束するからそこに泊まって欲しい」
「...?」
「着いたらわかるよ」

この世界にはGHSを所持していない人間がもう一種類居る事にさっきの会話で気づいた。
そう所謂捨てられた子供もまたGHSを所持していない。
そのような子供が生き抜くために売春する宿に心当たりがあった。
あそこならGHSを使う必要はないと思ったが、ジュードと出会った場所が場所だけに避けたかったが他に打開策など見当たらなかった。

「...ジュード。ここだ」
「いいよ、アルヴィン..この世界で信用出来るのはアルヴィンだけだから..ここでいいよ」
「悪い..本当にここしか思いつかなかったんだ」

ジュードは俺の服の裾を握って俺の後ろで小さく震えた。
禍々しいネオンと小汚い店先、全てがジュードと出会ったあの場所とリンクしていたからだろう。
愛想の悪い受付と二言三言会話し、入った部屋の先すらもあの部屋とよく似ている。

「ジュード、とりあえず風呂に入れ。そしたらまた手当してやるから」
「うん..わかったよ、アルヴィン」

そして俺はソファーに横になって視界に入る液晶画面をただ眺める。
頭の中はジュードの事しか考えてない所為か内容なんてまったく頭に入らない。
俺の国が不幸にした彼女を、俺の事を好きになると言ってくれた彼女の意思に報いたいそればかり考えていた。
そんな事を考えているうちに俺は浅い眠りに入っていた。

「アルヴィン...」
「ん....」
「アルヴィン...?」
「ジュード....?っておい!」

そんな浅い眠りから目覚めたのはジュードの呼び声だった。
髪から雫をポタリポタリと垂らしながらタオルを身体に纏い俺の身体の上に乗っかっていた。

「アルヴィン、服の替えがなくて..」
「そうだったな、とりあえず明日買ってやるから...今は..着てた奴はどうした?」
「あの、水が出て来るのが凄い勢いでお風呂に溜める時に濡れちゃったんだ..」
「そうか...の前に何で俺の上に乗ってるんだ」
「アルヴィンが起きないからだよ....あれ、ここ.....」
「出来たら触らないで置いといてくれたら嬉しい」
「わっ、ごめん..アルヴィン..!」

ジュードの姿に思わず反応してしまった下半身を邪見に思った。
ジュードもその下半身に気づいてか何処か顔を赤くして背けた。

「ア、アルヴィンは...僕が好きだからこうなったの...?それとも僕が裸だから?」
「どっちだろうな、ジュードはどっちだったら嬉しい?」
「僕が好きだからの方が嬉しいかな..」
「じゃあ、それでいいよ。...おい、ジュード。何で俺のベルトを外そうとするんだ」

ジュードは何を考えたか俺のベルトを外し、性器を露出させようとしていた。
ジュードの行動に寝起きの頭が付いて行かず、ジュードの腕に手を伸ばすがジュードは「いいでしょ」と言ってその手を払った。
そしてジュードは起ち上がった性器を見つめて、小さな口でそれを銜えた。

「ジュード..!何、考えてるかわかんねーけど、お礼とかそんなつもりなら止めろ」
「いいでしょ、..アルヴィンが迷惑じゃないなら..僕がこうしたいの」
「っ、ジュード..」
「っあ、ルヴィンの....大きくなった...きもち、いいの...?」

経験もテクニックもないジュードが精一杯に舐めたり触ったりする姿に下半身が更に熱くなる。
その反応にジュードは何処か楽しそうに舐めては触って銜えての繰り返し。

「ったく、何処で、覚えたんだか...」
「...っ...気持ちいい..?」
「..あぁ、....ジュード、...もう少し早めて...んで舌を絡めて」
「...っ、こう?」
「あぁ、そうだ.........っ!」
「....苦い..」
「ほら、口から出せ」
「...飲んじゃった...」
「い、今水やるから」

備え付けの冷蔵庫から水を取り出しジュードに渡した。
相変わらず髪は濡れてタオルを纏ったままだけれどそれすらも綺麗に思えた。
つい前まで身体に触れられる事すら恐れていた少女の変化に若干の不安が過る。

「...もしかして、俺が見返りを求めてるとか思ったのか...?」
「思ってない、だけど僕の所為で起ったのならそうしたいと思った...それに、アルヴィンの事嫌いじゃないから...」
「嫌いじゃなかったら、か」
「誰にでもする訳じゃないよ...!ただ、僕もアルヴィンの事が好きかもしれない。だからそうしたんだと思う」
「...あんまり不安にさせないでくれ...」
「うん、わかってるよ...だからこの先はリーゼ・マクシアに帰って僕の部屋でしよう、アルヴィン...」

そう言って彼女は俺の頬を触り、そっと触れるだけのキスをした。
生まれて初めての綺麗な恋の約束がはじまった。

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