「こんな所に..ホントにジュード...?」
「ハ・ミルの露店の方がたまに見かけるとおっしゃっていましたからここら辺でしょう」
「こんなに近くに居たのになんで気づかなかったんんだろう...」
「レイアさんそんなに気を病まないで下さい」

エリーゼが前、監禁されていた場所から更に果樹園を超えた先に小屋が一つあった。
リーゼ・マクシア中を探しまわってようやく見つけれるかもしれない。
"黒髪で黒服の10代半ばの少年"と聞いてジュードをすぐに思い浮かべた。
ただ"窶れてて目の下の隈が日に日に酷くなってる"そんな情報は聞きたくなかった。

「こっそり..ですね」
「ドアが、開いてますね」
「入ってみようか」

そう言ってわずかにあいたドアから部屋に一歩入る。
小さな部屋でベッドが一つあった。しかし...

「ア..ル...ヴィン?」
「レイア...それに...」

私が見たのは手と足に長い鎖を付けられたアルヴィンだった。
特に怪我している様子はなかったけど、その鎖が印象に残りすぎた。

「アルヴィンさん、何故此処に..」
「悪い..見なかった事にして帰ってくれねーか」

ハ・ミルの果樹園で桟橋から落ちて起きたらアルヴィンとジュードの姿は無かった。
アルヴィンがジュードを連れて行ったと思ったのにアルヴィンは此処に繋がれていた。
意味がわからなかった。

「分かるように、説明してくれないかな」
「今は何も言わずに帰ってくれ。今のお前らには..!」

"キィー"

木製のドアがゆっくりと開く音がした。
"黒髪で黒服で窶れていて目の隈が酷い"少年が入って来た。

「アルヴィン、今日はねケムリダケシチューにしようと思うんだ」
「ジュード!!?」
「ジュードさん..!」
「ジュード...」

部屋に入って来たジュードは驚いて買い物袋を落としてしまった。
野菜が部屋中に転がった。誰も、拾いはしなかった。
私が最後に会った時より更に痩せていた。

「ア..ルヴィン...だれ、この人たち..」
「ジュード..何、言ってるの?」
「...ア...アルヴィン...連れて行くの...?」
「...ジュードも一緒に行くんだよ..」
「そ、そんなの駄目!!ここは僕とアルヴィンだけの!!!」

意味がわからなかった。ジュードの言ってる事が理解できなかった。
自分にとってジュードは大切で、ジュードにもそう思って貰えてると思ってたの"誰?"なんて言われるとは思わなかった。

『....ローエン、頼む』

背後からアルヴィンの声が聴こえた。
ローエンは静かに頷きジュードに近づいてジュードを気絶させた。

「説明、して貰えないでしょうか」
「俺が..俺が悪いんだ、俺が...壊したんだ...あいつの心を」

アルヴィンの口から桟橋から落ちた後の話から今までの話を聞いた。
信じられなかった。ジュードを壊した?精神が汚濁する程に..?

「酷いよ...」
「レイアさん...」

ジュードはお節介でお人好しで優しくて芯が強くて、そんなジュードを...!
ジュードが怪我しないようにとかそんな事を思って付いて来た度だったのに
突きつけられた現実はあまりにも厳しすぎた。

「アルヴィン...」
「何だ..」
「..え..してよ...私の..!私の好きなジュードを..返してよ...!」
「レイア...すまない...」

"返してよ"そう言った時、さっきのジュードの顔が浮かんだ。
もう、本当に自分が知らない人に成り果てたように感じてしまった。
普段なら"諦めない"そう思えても"誰?"と言われた時の衝撃が忘れられなかった。

「...レイアさん、今日の所は一回宿屋へ帰りましょう。エリーゼさんも外で待ちくたびれてしまいます。」
「..そうだね。」
「..悪い」

そうして私達3人と1匹はジュードとアルヴィンの居る小屋を後にした。
帰り道は何も会話が無かった。誰も、何も、言えなかった。
私に出来る事は待つ事だけなのかな...。諦めたく、ないよ、ジュード...。


「あれ、僕、買い物から帰って来て...」
「起きたのか、ジュード」
「それで...アルヴィンを...僕と引きはな..!うぅっ...」
「ぜーんぶ、夢だ。ジュード」
「そ、そうだよね。この世界にはアルヴィンと僕だけだもんね」
「...」
「だから...アルヴィンと僕の世界を壊す人は居ないよね」
「...ジュード」
「ずっと、2人だけだよね...」


『なんて、悪い夢なのだろうか』




10.000Hitリクエスト企画第二弾です。
杏里様リクエストの『監禁ファイルRouteXの続編で、病んだジュード君を発見した仲間達が絶望する話』です。
ご希望に添えたでしょうか?絶望を感じるならレイア視点だろうと思いこういう風になりました。
ジュードがあまり喋れなくて申し訳ないです。
リクエストありがとうございました!!

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