ジュミラ、アルプレ前提のアル+ジュなお話です。苦手な方はお止め下さい。
僕らに襲いかかった二回目の不思議は突然始まりそして終わった。
それからもっと月日が経って源霊匣が完成し、それが普及し僕はハオ賞を受賞した。
僕の掌では収まらない程の名声と財産を手に入れた僕は前よりも有名になった。

「お前もすっかり今は有名人だな」
「...そう、なのかな。だけど、何一つ変わってないと思うんだけどね」
「有り余る程の富と名声があるのに何一つ変わらないってのも変だけどな」
「そうかもね」

世界を飛び回るアルヴィンが暇潰しがてらに僕の前に来る事は多い。
コーヒーと作りおきのお菓子で他愛無ない会話で過ぎる時間。

「それにしても手紙の数凄いな、ハオ賞受賞してからやけに増えたな」
「うん、捨てるにも捨てれないから困ってるんだ」
「あっさり騙されてるかと思ったけどな」
「僕はね、お金なんて本当はいらないし、タリム医学校の授業料と源霊匣の研究費を返せればそれでよかったんだよ」
「欲がねえなあ」
「欲は十分あると思ってるんだけどね、叶う事がないだけで」

僕がそう言うとアルヴィンは顔を少し顰める。
"彼女"に対してのこの感情が恋慕のものでないとしても、僕はあの人を想い続けているから。
だから、僕はあの手紙の差出人の彼女たちの思いに答える事はできない。
それに、仮にそうなったとしても不快にさせるだけだと思った。
そういう生き方をする僕をアルヴィンは心配しているようだった。

「じゃあもし寂しくなったり、泣きたい時はどうするんだ」
「アルヴィンこそどうしてるの?商売に成功してお金もあるし地位もある。それなのに縁談を断ってばかりなのはアルヴィンも一緒でしょ」
「..まあ、理由は対外おたくと同じかもしれないけどな」
「そうだったね...ごめん」

彼もまた、居なくなってしまった人の事を想っていたのだろう
失う事が怖いのか
全てを知ってでも受け入れてくれる人間が居ないと思っているのか
あの人以上に自分を思ってくれる人間は居ないと思っているのか
一人で過ごしてあの人へ想い続けるのが礼儀と思っているのか

「僕はこの先、もっとこの世界が豊かになってセルシウスのように何百年後にミラがこの世界に降り立った時に僕が残したものを見てくれるだけでいいのかもしれない。僕の一生は短いけれど、彼女の命は永遠に続くから」
「やっぱ欲深いな、おたく」
「だから言ったでしょ。...それに僕が寂しい時や泣きたい時はアルヴィンが側に居てくれるから」
「あぁ、そうなのか」
「だってレイアやエリーゼの前で泣く訳にいかないし、ガイアスやローエンだってそう」
「はは、そうだな」

もう、何年も昔の事になるけれど
僕の醜い部分とアルヴィンの醜い部分を垣間見た時、弱さを曝け出させるのはアルヴィンだった
一人でもそういう人間は多い方がいいと思うけれど、僕はたった一人で十分に思えた

「だから、アルヴィンも寂しくなったり泣きたくなったりしたら来てもいいんだよ」
「俺がお前の前で泣くか?」
「そうだったね、アルヴィンはもう沢山の人が居るよね」
「...嘘だよ、たしかに前より人は増えたけど。それでも全てを言える奴なんて片手でしか数えられない」

こんな暗い話になるはずではなかったのに、と言葉の間を埋めるようにカップに手を伸ばす。
僕らはどこかしら似ているのだろう、だからこそ生まれるこの空白の時間

「...」
「僕はね、どこにいたって一緒にいると思ってるから寂しくなんて無い。でも、そう思ってるからこそ寂しい時ってやっぱりあるんだ。だからそんな時にアルヴィンがここに居るとちょっと安心する。だからアルヴィンにとっての僕がそうだったらいいなって思うよ」
「ったく、相変わらずの優等生だな」
「それが僕だからね」
「...ありがとな」

その会話の後、他愛のない会話を繰り返しアルヴィンは帰って行った。
それから、僕の研究室に一つの変化があった。
部屋の隅に置かれた簡易キッチンの戸棚に僕のカップともうひとつのカップが増えた。
今では僕のカップと同じぐらい茶渋が残っている。


『さよならのあとに』


---


Thanks//確かに恋だった

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -