良い人間関係を築き上げるのは大変な事だ。
お客、仕入れ先、卸し先、スポンサー、仕事仲間、指だけでは数える事の出来ない程の沢山の人間。
望んでこの仕事を始めたはずなのに、悩みが尽きない。


『To Be Continued』


「ジュード、お前が頼んだ物持ってきたぞって...おいおい」

この研究所の部屋の主は机に向かったままうたた寝をしているようだ。
世界を変えた責任をとろうと、研究にひたすらに励んでいるのだろう。
机の上の論文や資料、サンプルは机から落ちる程に並んでいる。
椅子に掛けてある白衣をジュードの背中に掛けてソファーに腰をかける。

ポケットの中に入っているGHSの音が鳴り出し画面を見れば賑やかな文面。
『私ね、今エレンピオスに来たの!新しい仕事頑張るよ!』
画面を下へ下へとスクロールすれば、昔の仲間達からのメッセージで溢れかえっている。
この世界に、ミラが居たとしたならば俺には何と送ってくれるんだろうか。
きっとガイアスのように機械音痴で文字一つ打てないかもしれないな、と想像する。
たまにあの日々を思い出しては辛くなったり嬉しくなったりもする。
俺はこの世界で生きている。約束通り。

「...あれ...僕、寝てたんだ...」
「寝るならベッドの上で寝ろよ、風邪引くぞ」
「アルヴィン、来てたんだね!起こせば良かったのに」
「そんな隈ばっかり作ってる奴を起こせるかよ」

そう言うとジュードは「ごめんね」と言って、俺と対面のソファに腰掛けた。
少し前はあんなにお互いを傷つけたり、傷つけられたりしていたのに。
そんな思い出が蘇る。

「最近忙しくて、皆と連絡あんまりしてないけど元気そう?」
「あぁ、元気だよ。皆それなりに頑張ってやってるよ」
「それなら良かったよ。よくね、皆の事を思い出すんだ」
「色々あったからな」

ジュードは席を経ってコーヒーを二つ入れ、机の上に置きながら「そうだね」と笑った。
前の日々を思い出すのは、懐かしいからか、現実から一時目を反らしたいからか。

「いつか、また皆で旅に出たいなって思う事もあるんだよ」
「そうだなあ」
「..いつか、ね」

世界への対価は大きいもので、空想を絶対にはしてくれないようだ。
約束の為に離れてそれぞれが別々の道を歩いてもう半年になるのだ、懐かしいと思わない訳はないんだろう。

「そんなに落ち込むなよ、優等生なんだろ?サクっと解決してまた旅に出ようぜ」
「そうだね、そうだといいな」
「それに実現できるって思ったんだろ?俺も協力するし頑張れよ」

こんなありきたりな言葉で、ジュードが救えるとは思えない。
けれども、一緒に前に進もうと約束したのだからジュードが悩んでいるのなら助けてやりたいと思った。
俺がしがみついても良い居場所を作ってくれたジュードと、あいつらの為に。

「アルヴィンありがとう。論文に批判が沢山あったけどまた頑張れるよ」
「なら良かった」
「アルヴィンは、最近はどう?お仕事頑張ってる?」

ジュードはカップを机の上にそっと置いて俺にそう聞いて来た。
包み隠さず話すのがいいのか、悩みの種を増やさないためにも話さないのがいいのか。
あれだけ情けない所を見せていても素直に言えないのはいつもの事なのだろう。

「...ちょっと行き詰まって、悩んでる」
「そっか..アルヴィンも悩んでいるんだね」
「世の中はおたくらみたいな奴らばかりじゃないからな」
「そうだね、でも悩んでるって事は前に進んでるって事でしょう。アルヴィンなら大丈夫だよ。」
「簡単に言ってくれるなあ」
「アルヴィンこそそうじゃないか。そんなに世の中は簡単じゃないって事だよ」
「でもどうにかしようって思ってるんだろ」
「...そうだね」
「...大丈夫だよ、今は懐かしんでいてももしかしたら明日には想像もできないような事が起こってまた皆と旅に出てるかもしれない」
「そんな事あるのかな」
「そんな事明日にならなきゃわかんねーよ。だってあのミラ様が見守ってる世界だぞ」
「そうだね」

ジュードは精霊の主を思い浮かべてまた笑った。
明日には何が起こるかなんてわからない。
世界を揺るがすような出来事がまた俺達を待っているのかもしれない。
なら、自分に出来る事は前に進む事だけだと。

「それより、今度エレンピオスに来るんだろ?ならエレンピオスでも通用する服にしようぜ」
「これじゃ駄目かなあ?」
「それはこっちの世界の白衣だろ?俺も選んでやるから買いに行こう」
「今から!?」
「いいだろ、どうせ研究材料が届くまで時間あるだろ」
「確かにそうだけど..精霊の化石があと...」
「ほら、行くぞ」

〜。
突如再びGHSは鳴り響いた。
『今度、学校の皆とエレンピオスに行く..です』
『陛下と視察を兼ねてそちらに伺う予定です』
画面を開いてジュードと目を合わせれば、何か起きそうだね、と自然と口に出た。
それぞれが別々に歩いていたはずなのに、気づけばまた一緒に居るかもしれない。
その時が来るならば、今度は躊躇わずに差し伸べられた手を取りたい。
そして出来れば手を差し伸べたい。
きっと、その時には悩みなんてなくなっているんだろうと願っているから。

「これなんかいいんじゃないか?」
「似合わないよ」
「いいんだよ、これで。」
「・・・このままじゃだめ?」
「駄目、ほら身だしなみがきちんとしてないと胡散臭いって思われるぞ」
「アルヴィンが言ってもねえ」
「何か言ったか、あー、ピアスとかいいんじゃないか」
「え?!嫌だよ、それに父さんと母さんも手入れしなきゃ化膿するって患者さんに」
「はいはい」

何故こんな事を思い立ったのか、それは今でもよくわからない。
けれど、GHSから鳴り響く音楽が何か起こると予感させる。
それが俺達に訪れた新しい旅の始まりなのか、永遠と続く日常への妖精の悪戯なのか
明日になればわかるさ。きっと。


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