「アルフレド、学校の制服を着てついて来なさい」

喪服の集団の中に紛れ込む。
こんなに大勢の喪服に囲まれたのは7年前の母さんの葬儀以来の事だ。
記録帳の記入の列を無視するかのように葬儀場の奥へと連れて行かれる。
辿り着いた先にあるのは二つの遺影と棺と花。
そして、棺の前で踞る俺と同じ制服を着ている子供。

「アルフレド、この顔をよく覚えておきなさい」
「..はい、父さん」

この言葉の意味なんか理解する事はできなかった。
大人の言う事は時によく理解できない。
この顔を覚える事に何か特別な意味があるのか、俺には分からなかった。

ただ、葬儀の間最前列の隣の席で呆然と遺影を眺めている
あの踞った子供ージュード・マティスーの隣に座らされている事には子供ながら疑問を抱いた。

『そうそう、アルフレド、ジュード君とは会った事があるか?同じ学校だろう』
『特進科の人とは接点がないので知りません、父さん』
『そうか...でもそういう人達とも関わりを持つ事も大事だぞ』
『はい、父さん』

『相変わらず特進科って勉強だけだよな!体操服着てる所とか見たことねえ』
『本とお勉強がオトモダチなんだからしょうがねえだろ』
『本当、勉強勉強馬鹿みたいだよな。所詮家柄の善し悪しでしか決まらねえのに』

この二つの難題は葬儀が始まって終わるまでに解かなければならなかったようだ。
何故ならば、もう答え合わせがそこに迫っているからだ。


「アルフレド。今から大切は話をする。いいか。」
「はい、父さん」
「あの遺影の顔はちゃんと覚えてるか」
「朧げにですが、覚えています」
「隣に座っていた子を誰か知っているか」
「...接点はないですが、知ってはいます」

『おい見ろよ、中間テストの結果張り出されてるぜ』
『どうせ俺らの名前はねえよ、上から数十人しか載ってないのに』
『特進科で一位とか気持ち悪いよな、それこそ勉強しか取り柄がないみたいで』
『ほら、どうせアイツだろ』
『アイツ、先生にチヤホヤされてるからテストの問題知ってんじゃねえの』

「...今まで話さなかったが、よく聞いて欲しい」
「...?」
「あの遺影の2人がお前の本当の両親だ。そして隣に居た子がお前の双子の兄弟だ。」


何でだろうか、視界が歪む。父さんの声がぼやけて聞こえる。
何を言っているのか、父さんがどんな表情で言ってるのか、何もわからない。
俺と、父さんは血が繋がっていない・・・?
父さん?父さんって何?
母さん・・・?母さんは・・・?

『アルフレド、今日は貴方の好きなピーチパイを作ったの』
『アルフレド、食べ過ぎたらお腹壊しちゃうわよ』
『アルフレド、母さんアルフレドの事が大好きよ』
『アルフレド、母さん・・体が弱くて・・・寂しい思いをさせて・・・ごめんね』

アルフレドー

「アルフレド・・・、すまない、唐突すぎたな・・・アルフレド?」
「いえ・・・」

父さんが話す内容の半分はまったく頭に入らなかった。
何を言っているのか理解ができなかった。
聞こうと、必死に耳を傾けても頭に入らない。

「で・・だが。残されたジュード君を引き取る事にしたんだ。元々は血を分けた兄弟だ。一緒に暮らせるか」
「・・・はい・・・」

血を分けた兄弟。
父さんと母さんと繋がっていたはずなのに、何で望んでもない奴と繋がっているの?
なんで俺だけ血が繋がってない。
なんで血が繋がってるのに俺がいない。
なんで俺だけ何も知らない。


『白昼メランコリー』


嘘吐きばかりだ

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