闘技場でアルクノアとの一戦を交えた後、僕らはティポを取り戻す為に研究所跡へ向かった。
着いたら着いたで、ティポはメモリーを失ってしまっている。
エリーゼは泣いている、アルヴィンは戦闘に疲れ果てていた。
今までなんとか形を保っていた僕らに入った些細な亀裂。
今思えば、言い訳かもしれないけれどそれがきっかけだったのかもしれない。

各々の亀裂は些細でも、集団で居れば時に不穏な空気になる。
それに少し息が詰まって気分転換に、と僕は街をフラフラと出歩いてしまった。

「ディラックの息子だな」
「..?!父を知っているのですか」
「あぁ、よく知っているよ」

僅かな油断に、僕は背後から近寄る影に捕われてしまった。
一般人に紛れ込み、非道な行動も平気で行う そんな人達を僕はよく知っていたのに。
あの人が、そう教えてくれていたのに。

「おい、起きろ。」
「...っ、....」

体を揺さぶられて眩しい光が目に差し込んで来る。
目を擦ろうとしても、手は動かない、体を起こす事すら叶わない。

「やっとお目覚めか。」
「あ、なたは...」

微かに見えた姿は誰かによく似ていた気がしたけれど、繋がれた体から彼を誰かは突き止める事はできない。

「それに答える義務は俺にはない、ただ、お前にはやってもらう事がある。裏切り者の息子よ。」
「...!!ミ、ラを危険に合わせるような人に...協力する気はありません」
「そんな状態でよくそんな戯言が言えたものだな。」
「...僕に出来る事なんて...ないから、僕を開放してください」

僕の視界の外から話しかけて来る人物に僕は言う。
僕がそういえば、その人は不気味な嗤い声を放ち部屋のドアを開けた。

「少々拷問が必要の様だ、なあにあいつに飼いならされているのだから平気だろう」
「あ、いつ...?」
「少々、出来損ないの甥の事だ。」
「あなたは...誰...?」
「ふん...入れ、好きにやってかまわん。ただ、こいつには一仕事やってもらう事がある。程々にな。俺はイル・ファンに戻る。」

聞こえるのは、開けた扉から聞こえる複数の足音。
先ほどまでの会話を思い出し、どうにか繋がれた手足を動かすも壊れる気配はない。
そして複数の足音分の手が狭い視界に入って来て恐怖に体を強ばらせる。

「や.....やめて...ください、..さっ触らないで!!!!!」
「.....」
「やめっ―」

叫ぼうと思った、助けは来ないのだけれど、諦めてしまったら全てが終わる気がした。
だけど、僕の声は出なかった。首を締められて嗚咽を出すだけになった。
それを彼等は音もなく嗤い、声も出さずに僕の衣類を剥いで行く。

アルヴィン、アルヴィン、助けて助けて、僕を助けて!
叫びたかった、だけど叫べなかった。
逢瀬の時に彼が教えてくれた彼の秘密、彼は 来ない と諦められる理由。
アルヴィンの母はこの組織の人達によって命を長らえられてる、来る訳がないと思った。

「.....」
「っ...はっ.....はっ....」

喉元を圧迫され、短い呼吸をするも息苦しい。
そんな僕を彼等は馬鹿にしたように嗤って、足の楔を外して僕の足を持ち上げた。
その隙に僕は楔を外した男を蹴るも僕の首を締めている男が僕の頬を殴った。
口の端から足れる液体は唾液なのか血液なのか僕にはわからない。

大人しくなった僕の足を再度持ち上げて、後穴を複数人で見られる。
恥ずかしさに体を捻るが、小さな抵抗は伝わらず逆に煽ってしまったようだった。
その証拠に、僕の下半身に走る鈍い痛み。千切れるような四肢の感覚。

「っはー、なんか適度にキツくて気持ちいいなこれ。」
「おい、声は出すなとジ――ド様が。」
「いいだろ、どうせあの人は今頃イル・ファンだ。」
「そうではなくて、こいつの仲間が来たらこの部屋に居ると気づかれるだろう。」
「来る訳ないだろう、こんな場所。」

一人が喋り出した事を皮切りに、無音だった室内が騒がしくなる。
しかし、体に入り込んだモノが出入りする痛みに耐えるしかない僕は顔を顰める事しかできない。

「しかしこんな奴捕まえて何につかうんだよ?」
「ナニにって俺らの精処理用じゃないのかよ」
「そうだような、こんな中途半端な人間はあの計画にも使えやしない」
「おい、首離してやれよ。殺したらあの人に何されるか」

僕は不完全な人間、らしい。
本来ならば、こんな所精霊にマナを分け与えて危機を回避する事ぐらいできるかもしれないのに。

「ほら、お前らがそんな事言うからこいつ泣きそうじゃねえかよ」
「じゃあ泣いてる暇があるなら相手してくれよな」
「やっ、も、やめっ、、、いたいっ、いた..」

首を締めていた男が僕の胸に乗りかかり、一物を口の中に入れようとしていた。
それを拒もうと身をよじり固く口を閉ざすも萎え切った性器を掴まれ痛みで叫びそうになる。
その開いた口に男は容赦なく一物を入れて来て頭を掴み振るわせる。

「っ、!!噛むんじゃねえよ!」
「おい、そんなに殴ったら後で使いものにならなくて怒られるぞ」
「ああ、そうだったな。じゃあ、後ろに突っ込ませてくれよ」
「嫌だよ、俺まだイってないんだから」
「二本くらい平気だろ」

男が僕の上から居なくなって、後穴からミチミチと異音と共に下半身に痛みが走った。

「いやああああああああ"、ああああっいたいいたいたいあああああ"」
「ほら、痛いってよ」
「だってなあ、拷問ってんだからいいんじゃね?」
「うっ、う...あ.............」
「勝手にトンでんじゃねーよ、ほら起きろ」

コップ一杯分の水が頭の上に振って来る。
頬を痛いぐらい叩かれると彼等は馬鹿にしたように嗤う。
あぁ、もう、痛みすらわからなくなりそうだ。
僕はこのまま、もう―――

「じゃあ再開っと             」
「おい、どうし.....」

ベチャリ。
僕の胸元に乗っかっていた男の血液が降り注ぐ。
胸元に風穴が開いていて、その横の男には剣が突き刺さっていて、他の男も倒れていた。

「.........」
「あ....る....う"ぃ...ん....?」

僕の目の前には返り血で血だらけのアルヴィンが立っていた。
思考が追いつかない頭で考えるのは、彼と彼の母と彼等の関係の事だった。
助かった、これで大丈夫、だと思ったのはほんの一瞬の事だったのに。

「...ア、ルヴィン...殺しちゃった..の...?」
「...ジュードが好きだから....殺した....」
「だ...だって、レティシャさん...ここの人がいないと...!」
「....ジュードが好きだから、ジュードを犯したから殺した....」

痛む下半身を無理矢理起こしたら、ズルリと男のモノが抜けた。
よたよたとアルヴィンに近づこうとしたら弾丸によって手の楔が切れていて開放されている事に気づいた。

「ア、ルヴィン...だって....今まで、レティシャさんの為に.....」
「...ジュードが好きだから.....気づいたら、皆殺してた....」
「アルヴィン、ごめんね...僕が、僕が...油断したせいで....こんなに血に塗れて...」

アルヴィンのジャケットを着て、いつかのように抱えられて僕らはシャン・ドウに戻った。
皆の居る宿屋ではなく、彼の母親の住居に。
彼の母親が居るはずのベッドは既に空っぽになっていた。

「母さん....死んだよ、だから.....ジュードは無くさない、あいつにもう何一つ奪われたくない」
「アルヴィン.....」
「だから、ジュードも何処にも行くなよ...」
「わかったよ...アルヴィン」

そして、彼は僕の腕を掴んだ。
何だろうか、と眺めていた。少し嫌な予感もしていた。
彼がポケットから取り出した楔で僕はベッドに繋がれてしまった。

「ア、ルヴィン....?!」
「何処にも行かないって言ってくれたよな」
「そういう意味じゃないでしょ..!?アルヴィン?!」
「ここはアルクノアに見つかってない場所だから大丈夫だ。」
「アルヴィン!!」
「大丈夫、誰か連れ戻しに来ても俺がちゃんと始末するから」

そう言って彼は僕にキスを落とすと部屋から出て行った。
僕は、先までもこれからも何一つ変わらないのだと 涙が出そうになった。

そして、彼は僕を言い間違える事が多くなった。
"母さん"と彼は僕に言う。


『純粋で純粋で純粋で狂気で』


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Thanks//確かに恋だった

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