一目会った時に、僕はアルヴィンに恋してしまった。
今思えば、それは間違いだったと思う。
でなければ、僕は彼に縋り付くような真似はしていないから。

出会って、僕の気持ち、思いに気づいたアルヴィンは僕に迫った。
僕はそれが嫌じゃなかったから、受け入れたし彼のどんな要望にも答えた。
たとえ、自分が満足しなくても。
手首に痕がついたって、卑猥な言葉を喋る事だって厭わなかった。
僕が彼にすっかり溺れていた頃に、ベッドの上でアルヴィンは囁いた。

「鍵の場所をしらないか?」

そう聞かれたのだ。
"鍵"と言われても、何の事かわからなかった。
ミラが持ち出した、と言われてもわからない。
ミラは何かを持ち出していたが、あれは到底"鍵"と言えるものかわからない。
だから、「知らない、わからない。」と答えた。

「じゃあ、用済みだな。」

と、彼は低い声でそう言った。
彼の目はもう、僕をただの無機物としてしか見ていないように思えた。
お前が居たら、探すものも探せない。そう言って彼は僕を棄てた。
僕達が訪れた二・アケリアから少し離れた森へ。
追ってこないようにか、ご丁寧な事に薬まで盛ってくれたようで最後に見たのが僕を塵みたいに見るアルヴィンが最後だった。


目が覚めたら、僕はただ広いスペースにベッドだけある部屋に居た。
盛られた薬はなんだったんだろうか、軽い頭痛、目眩がする。
ここは、何処なんだろうか。

「起きたか。」
「...あ、なたは...?」
「ガイアスだ。」
「ガイアス、さん..ですか、ありがとうございます..僕は、」
「ジュード、そうだろう?」
「...手配書で..見たんですね、迷惑かけてすみません..僕..戻らなきゃ..」

朦朧とした頭で、言えたのは"戻る"という言葉。
僕がベッドから起きて経とうとしたら、目の前に居る男は僕の肩に手を当ててベッドへ落とした。

「戻って、どうするんだ?お前に戻れる場所はあるのか?」
「...僕の、何を..知ってるんですか?」
「今更お前を捨てた男の所へ戻ってどうする?また捨てられるだろう。」
「..ア、、アルヴィンは..僕が、僕がちゃんと答えられなかったから...!」
「それでもあの男はお前を捨てる、価値がないからだ。」
「か、ち...?なんで、貴方に..そんな事..」
「家にも学校にもないんだろう、そんなお前の唯一の居場所だったのにな。」
「なんで、僕の事を..そんなのに...!」
「帰った所でお前は何度でも捨てられる。利用価値がない上に邪魔だと。」
「違う..僕は、アルヴィンが..好きだから...アルヴィンもそうだ..と..」
「あの男がそう言ったのか?ただの道具としてしか見てなかったんじゃないのか。」

情報を、手に入れるまでの遊び道具...?
僕が..?
口の中に欲を吐き出され
劣情な言葉で罵られ
悦んで手首と手首を繋げた僕は 彼の玩具に過ぎない?

「お前は捨てられたのだ。戻る所もなく、孤独に、独りで。」

そう、脳天に響くように囁かれた。
その瞬間にループするのは、孤独が嫌いな昔の僕の姿と愛しい人に森に捨てられた僕の姿。
急に、自分の心のバランスが取れなくなる。
そう、僕は帰る所すらなく、ただひとりぼっちの...。

「う...あ.......」
「お前を救える道は一つしかない。」
「僕が..救われる...?」
「そうだ、俺の側に居る事だ。」
「...そ、したら、僕は...ひとりじゃない...?」
「ああ」
「す、てられない...?」
「ああ」

ベッドに倒された体に、男の大きな手が僕に触れる。
そしてその手は僕の服にかけた。

「だから、俺を受け入れろ。」
「...いいの....?」
「あぁ、俺の望みを叶えればお前が望んだようにしてやる。」


『はやくその毒をください』


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Thanks//確かに恋だった

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