「それでも、またアルヴィンと触れ合えるようになるなら僕は待つよ」
「アルヴィンの事が大事だから、僕も一緒に受け止めたいんだ。余計なお世話かもしれないけど」


『僕の隣が君にとって一番幸せな世界でありますように』


そんな事を言われてから、随分の日がたった。
未だに俺は心配そうに見つめるジュードを真っすぐ見る事ができない。
嫌いな訳じゃない。
むしろ、人間的にもジュードに惹かれる所はある。
だから、これは好きといってもいいと思うのだけれど。
昔のトラウマが俺の邪魔ばかりをする。

「アルヴィン、僕ね。仕事でしばらく戻れそうにないから。」
「そうか。気をつけろよ。」

何も言わず、俺の側に居てくれる。
こいつの隣に俺が入れる権利なんてあるんだろうか。
トラウマ、トラウマ、そう言って、優しく差し伸ばされる手を何度も振り払って来た。

「ちゃんと、ご飯、食べないと駄目だよ?」
「そんな子供みたいに言わなくたってわかってるよ。」
「そうだったね。」

と、彼はクスっと笑った。
こいつは俺なんかじゃなくてもっと、こいつの為になるような人の為にこいつを譲るべきではと。
拒む事しかできない、俺には、勿体ないと。

「..この生活、どれぐらい経ったか。」
「うーん、2年とちょっと、かな。」
「18歳なら...もう、婚姻できる年だな。」
「...そうだね。」
「俺、なんか待たなくたって、いいんだぜ?」
「...諦めて欲しいの?」

そう、心にも無い事を言ってしまった。
俺の為に何年も使ってくれたジュードに、酷い事を言ってしまった。

「そう..だよね、無理に僕じゃなくても...女の人だったら、アルヴィン苦しまなくていいよね..ごめんね、僕の我侭だった...」

そういうつもりで言ったつもりなんてまったくなかった。
ただ、ジュードの為を思って言ったつもりだった。
触れなくても、ただ側に居てくれるジュードを手放せる事なんてできるはずがないのに。

「..ごめんね、アルヴィン。僕...行くね。」

いつものように笑うジュード。
このまま手放したらもう戻れないような気がした。
それを望んでいたはずなのに。
それを望める度胸もない癖に。
矛盾ばかり。
でも、それでも、側にー・・・

「ジュード...!」
「ア...ル、ヴィン...?」

気がついたら、ドアノブに手をかけるジュードを抱きしめていた。
あれほど、できなかったのに。
あれほど、嫌悪してきたのに。

「...行かないで、欲しい..。」
「...それなら、初めから意地を張らなければければいいのに...」
「..うるせ」
「あったかいね、アルヴィン。」

ジュードの体がこんなにも温かかった事を初めて知った。
側にいるならば、ジュードの隣じゃないと駄目だという事も。
今は、少しの幸せも与えられてないかもしれないけれど
いつしか躊躇いもなく抱きしめられるならば、ジュードを幸せにしよう、と。

「あと、30年ぐらいしたらセックスできるかな?」
「30年も待つつもりかよ、おい。」
「いつまでも、待つよ。アルヴィン。」

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