馬車が動く。
住み慣れた地から、知らぬ町へ。

先日、帝に次ぐ高い権力を保持していた父親が亡くなった。
母親もそれを追うように死別した。
権力を持っていた父親という存在という理由だけで、自分もそうなるだろうと言われていた。
正直、どうでも良かった。
その虚をつかれ、その椅子は叔父のジランドへと渡った。

自分をその策に貶めたジランドは哀れみの如く一つの縁談を用意した。
父親と同じぐらい高い権力を持つ家の世継ぎの妹君との婚姻だった。

「政の道具なんてごめんだ。」
「俺は俺のしたいようにしたい。」

揺れる馬車の中、そんな事ばかり思っていた。
優しき父親も母親もこの世にいないのだから、頑張る理由なんて見つからない。

着いてそう日が経たないうちに婚姻の儀は執り行われた。
肝心の妹君の顔は白無垢に覆われていてちっとも見る事すら叶わない。
ただ、肌が白い事と髪が漆黒のような黒である事ぐらいしか図り得なかった。
そして、今は妹君の住まう屋敷へと向かわされている。

「政の道具とはいえ、15の女を抱くはめになるとはな」

入り口で護衛、女房に迎え入れられ妹君の居る部屋に案内された。
俺は俺のしたいようにしたい、と思いながらこうも叔父の命令通りに動いてしまっているのだろう。
縁を結び、叔父はこの家さえも手に入れ、果てには帝の位にでも着くつもりなのだろうか。
今となっては全てがどうでもいいと感じてしまう。
襖をゆっくり開ければ、何畳にも広がる部屋だった。
部屋の中央を御簾で分けられていて、婚約者の姿はうっすらとしか見えない。
これが初夜を迎える旦那を迎え入れる姿勢なのだろうか、俺には拒否されているとすら思う。

「わざわざお越し下さって、ありがとうございます。」
「別にいいんだけどさ、御簾あげてくれない?俺達婚姻してるんだろ」
「...その非礼をまずは謝りたいと思います...。...僕の持っている高価な袿でもなんでも差し上げます。他所の女性と関係を持たれても構いません。...なので、形だけの夫婦でいさせてください...。」

御簾の奥から聞こえて来る、そんな声。
今までの人生を全て押し付けられて来たように感じていたのに、まだこうも押し付けようとする。
それに憤慨しかけるが、11も年下の娘だと頭の中で理性を保つ。

「おいおい、ここまでやってきたのに冷たくないか?」
「許して貰えるとは思いません、ですが...僕の為でもあるし貴方の為なのです。」
「...貴方の為?自分の為が一番に決まってる。俺は、俺のしたいようにしたいんだ...」

そう言い、御簾へ一歩一歩と近づき入れば焦っている、怯えている様子の妹君が居た。
白無垢から覗かせた、白い肌も黒い髪もあの時のままだった。
そのまま近づき、力任せに重い着物を纏った妹君を押し倒した。

「...無礼ですよ。」
「おたくもな。」
「...僕は、ちゃんと言いました...。家の為に、兄様の為にも婚姻は必要なんです。」
「それはそれ、これはこれ。いいじゃないか、政の道具でしかないんだから。俺達は。」

この展開を予想していなかったのか、しっかり着込んだ妹君の着物を一枚一枚開けさせると違和感はすぐに訪れた。
女性のあるべき場所がなかったのだから。
それを見ると、目の前の妹君は泣く寸前、顔は青ざめている


「...」
「...だから、言ったじゃないですか...。」
「ジランドの奴、これが狙いだったんだな。本当どうかしてる。」
「...乳母以外この事を知る人間はいません、知られてる訳ない..。」
「そんな情報をなーぜか、知ってる奴だからな。あんたもグルになって俺を騙して楽しんでるの?」
「違う!..僕だって、こんな事..したくない。」
「あぁ、そう。妹君じゃなくて弟君?言いにくいな。」
「...僕にはジュードという名前があります..。」
「まぁ、俺にとってはどうでもいいけど。...そういえば、"初夜"しに来たんだっけ。俺。」

そう言ってやれば、俺の下に敷かれた体は震え出した。
脱がしかけていた着物を脱がせば、恥じらうように体を丸め涙を流した。
その姿すら滑稽に思えて、騙された分だけ辱めてやろうと丸まった体を暴いた。

「衆道って言葉知ってるか?俺の所の若い衆もその気があって話とか聞いたからな。」
「...僕を襲っても、貴方が、アルヴィンが...得るものなんてなんにもないのに!」
「ある。こんな着物を着飾ってまで男で居続けようとするお前の心を折る事位できる。」
「...最悪だ。」
「...あんたもだけどな。」
「...僕の心なんて物心がついた時にもう折れてる、どんな事があったって僕は僕なんだ...。」
「じゃあせめて、女房を怪しませない程度に可愛い声で鳴けよ。」

そう言って、噛み締める口をこじ開けて指を突っ込み唾液で絡ませる。
萎え切った性器に指を絡め、動かすと少しずつ起ち上がって来る。
それを馬鹿にしたように鼻で嗤い、手を後ろ穴まで下し固く閉じ切った後穴を広げる。

「っあ、いたっ、あ」
「でもあんたが割と綺麗な顔してて良かったぜ。起つものがねーとどうしようもないからな。」
「ゆ、指、ぬいてっ..いた、い」
「指なんかじゃなくて、もっと大きいものが欲しいって?」
「っ、そんなこ、いって、ないっ」

それすらも滑稽に見えて、指を引き抜き自身を後穴に当てるとジュードの体は震えた。
強引に腰を進めると、ジュードは嗚咽混じりの悲鳴をあげるので口に指を入れて大人しくさせた。
口の中も腸の中もカラカラで、こっちが痛い位締め付けてくるので性器を再び上下すれば火照り潤いを見せた。

「やっぱ、はじめはキツいな。」
「..っ、いっ、あっ」
「ほら、もっとリラックスしてくれねーと俺痛いんだけど」
「む、ちゃ、いわなっ」
「あ、そうそう。良く出来るじゃねーか。」

僅かに緩んだ隙間に自身を押し進め、ゆっくりゆっくりと動かすとジュードは顔を強ばらせた。
仕方ないので、唾液塗れの手でジュードの性器を掴み再び上下させれば顔を紅潮とさせた。
耳元で「男にされてるのに気持ちいいんだ」と呟けば中をぎゅっと締め付けた。

「こりゃあいい。女だったら遊女にでもなれるんじゃねーか?」
「っあっ、ぼ、くは、男だ、っ」
「そうか?男根銜えこんで善がって鳴いてるくせに!」

そのまま、腰を動かしつつ手を上下にさせていたらジュードは甲高い声をあげて精を放った。
それと同時に容赦なく後穴は俺を締め付け、精を吐かせた。

「っ、あっ...はっ..」
「満更でもなさそうだな。」
「...アルヴィン...貴方は...最低だ。」
「そうか。」
「...この事を、父上や...母上は...知らない、兄上も知らないから...言わないで。」
「さぁ、どうしようかな。ジランドと罠に嵌めようとしてるのかもしれないしな。」
「...僕は、..そんな事してない...。ただ.....」
「ただ?」

そう聴くと、ジュードは諦めたかのようにこうなった経緯を話し始めた。
この屋敷の主人と正妻との間の子として兄上が産まれた事の事。
その兄上が幼い時に病気を煩い、地位を次げるか不明な程病弱だった事。
奇跡的に回復はしたが、体の弱い兄上を主人は良く思っていない事。
その後、主人と側室の間にまた男が産まれた事。
元気に産まれたその子を主人は大変気に入り跡継ぎと考えていると正室に漏らした事。
その数日後にその子が亡くなってしまった事。
正室の女がその子を殺す所を乳母が見てしまった事。
その後、別の側室に子が生まれ乳母が取り上げた時に危険を察知して思わず「女の子」だと言った事。
それからずっと、女として育てられた事。

「そりゃ、難解だな。」
「..だから、僕も...その子と一緒にはなりたくない..だから、言わないで欲しい。」
「命が惜しいから、こんな奴にだって頭を下げるってか」
「...そうだよ、僕は...死にたくない...」
「死にたくないなら、なんでもできるってか」
「...僕に、できる事なら、なんでもする...だから、言わないよね..?」
「俺は、俺のしたいようにする。」
「...アルヴィン!」
「じゃあな、ジュード。また来る。」

俺の一言一言が怖いのか怯えるジュードを残して屋敷を出た。
あんな15の子供が俺に命を握られていると思い、怯える姿がまたも滑稽に見えた。
そんなすぐに殺してなんかやらない。
俺は、俺のしたいようにする。
所詮、俺達は道具でしかないのだから。


『運命に弄さるる者』


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