僕の前に落として行ったのは洛山高校のパンフレット。
器用な癖して、なんでこんなに不器用なんだろう。

「赤司君。」
「テツヤか。逃げるのはもう止めたのかい。」
「違います。これ。」
「あぁ、僕が落としたのを拾ってくれたのか。すまない。」

あぁ、嘘つき。
君が送って来た人生で積み重なった勝利とプライドは、君に嘘ばかりを付かせる。

「赤司君、落としたんじゃなくて、わざと落としたんですよね?」
「へぇ、テツヤも面白い事を言うんだね。」
「貴方は、素直じゃないですから。」
「僕が?テツヤにそういう風に言われると心外だな。」
「洛山に、僕と一緒に来て欲しいって言えば良いのに。だから、それすら言えない赤司君と共には行きません。」
「っは。涼太がテツヤに振られる所をよく見て来たけど。僕がテツヤに二度も振られるはめになるなんて、ね。」
「でも、悲しまないんですね。黄瀬君はいつも泣きますけど。」
「本当に面白い事を言うようになったよね、テツヤは。」

赤司君は僕が渡した洛山のパンフレットをぐしゃっと握りつぶした。
まずいです、何か言い過ぎてしまった様です。

「テツヤでも、これ以上の狼藉は僕が許さないよ。」
「許して貰えなくていいです。僕達は道を違えたんですから。」
「前も言ったように、僕を否定した君に最期に勝利が訪れるなんて思わないでね。僕がテツヤを地に伏す。誠凛が君を潰す愚かな者なら僕が君を引きずり出して僕の勝利へのフィギュアヘッドにする。」
「...わかりました。」

どんなに年月を共にしても、彼から来る圧迫感を僕は好きになれない。
彼等にないものを僕は探しに行くのだから、それが見つけられない僕にはそういう運命が合ってるのだろう。

「一つ、約束します。」
「今日は随分おしゃべりだね、テツヤ。」
「僕が誠凛で探し物を見つけて、それで皆に勝ったら僕の事を本当の意味で認めてくれますか。」
「僕がテツヤに負けると思うの?」
「...今はわかりません、でも勝ちたいとは思います。」
「テツヤに負ける日が来るとすれば、それは僕の理念が崩れる時だ。決して訪れないだろうから、いいよ。」
「自意識過剰も良い所ですね。」
「だって、僕は何時だって正しい。そうだろう。」
「...今はそうですね。でも僕が赤司君に勝つ事ができたら、また皆でプレイしたいです。君に勝つという事はそういう事ですよね。」
「いいよ。でも今のテツヤじゃ無理だ。一人っきりでは生きられない君は僕を超えられない。だから、その約束が果たせなかったら僕はテツヤを貰うから。」

それは、どの道どっちが買っても僕らは一緒になってしまうじゃないですか。
でも、僕の,僕のバスケで皆を倒せる日が来るなら、僕の探し物でまた皆と奇跡を起こしたい。

「誠凛で、僕のバスケで、僕は君に勝ちます。」
「それでも、テツヤの全てを否定してあげるから。」

僕達は、決別した。
お互い納得したはずなのに、なんで赤司君、君は去り際に哀しそうな顔をするんですか。
たった、3年がかりの約束でしょう。

「本当に、赤司君の言動と心はブレてますね。」

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