「ジュード」
「...」
「ジュード、ジュード」
「...」
「ジュード、涙」

そう言って、彼は僕の目尻に溜まる涙を指先ですくった。
僕が何故、泣いてるのかは君は知らない。


『でも僕は愛してる』


「ひゃっ、やめて!」
「なんでこんなに帰ってくるのが遅いんだよ!」
「だ、って、仕事が..急患っ、が..」
「俺はいつだってジュードの事を考えてるのにおたくは違うの?俺なんかどうでもいいの?」
「だ、か、ら..そんなこ..!」

アルヴィンと同棲している家へ帰ると、急き立てるように僕をドアに追い込んだ。
そしてギリギリと手首を握られ、僕が歯向かうと首を締められる。

「そ、んな、自分勝手な...」
「自分勝手?俺が自分勝手なのか?」
「そう、じゃないか..だって、僕の都合なん、か...きいて」

ドカッと頬を殴られた音がした。
頬が焼け付くように痛かった。

「っ...!」
「ジュードは、俺に会えなくてそれでいいの?俺はこんなにジュードの事を思ってるのに」
「...ぼ、く..だって...」
「思ってないよな?死にかけの奴の為に俺との時間がなくなるの?」
「アルヴィン..なんでそんな、非人道的なの...?!」
「俺はジュードがいればそれでいい。だけど、ジュードは違うんだろ?」
「なんで..わかって、くれないの..?」
「わからないね。ジュードが俺の事をわかってくれないから。」
「...酷い。」

そう言えば、また殴られた。
反論もまともに言えない、自分の意見を言えば殴られる。
何故だか悲しくなってポロポロと涙が出て来る。

「ジュード」
「...」
「ジュード、ジュード」
「...」
「ジュード、涙」

ふ、と彼からの暴力が収まる時がある。
我に返ると言ってもいいかもしれない。
それは僕が泣いた時だ、そうすると彼は我に返り僕の頬に手を触れ名前を連呼する。
真っ赤な頬と痣が出来た手首を優しく握りまた名前を呼ぶのだ。
その時の彼の体温が温かく、優しく抱きしめる。
まるで、さっきまでが嘘みたいに。


「ジュード..これ、また増えてるよ?」
「あ、うん。」
「"あ、うん"じゃなくて、死んじゃうよ?」
「うん、死ぬかもね」
「"死ぬかもね"じゃなくて、..なんでそんなになるまで一緒に居るの?!」

レイアが心配そうに、僕の手首と頬、首を見つめてそう言う。
彼女からそう諭されるのも何回目だろうか。

「もう、別れなよ...」
「大丈夫だよ、レイア。」
「大丈夫じゃないよ..」
「アルヴィン、僕がいないと生きていけないし。きっと僕が居なくなっても探しちゃう。そんなアルヴィンをほっておくなんて僕にはできない。アルヴィンは本当は優しいんだ..。」
「ジュード..」

彼女は哀れむような目で僕を見てきた。
わかってる、このままじゃ僕は本当に死んでしまうかもしれないという事。
でも、アルヴィンは僕がいないときっと生きていけない。
そんなアルヴィンを捨てる事なんて今更僕にはできない。
それに、やっぱり好きだから。
好き、だから。


「ジュード、どこいってたんだ」
「レイアと、ちょっと、ね」
「レイアと?今日俺早く帰って来るって言ったよな」
「うん...言った...」

手首にもう一つ、痣ができた。
首にも一つ、頬は腫れた。
きっと、こうでもしないと愛を繋ぎ止められない彼はなんて哀れな人。
それ愛してしまった僕もまた、哀れな人なのだろう。


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Thanks//確かに恋だった

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