シノと別れたころ、すっかり私の中には悲しみが戻っていた。
タダオはもういない。
もう、いないんだ。
そういえばタダオもシノを怖がっていた。昔シノの虫かごがひっくり返ってしまい、その時散らばった虫が数匹タダオの毛に潜り込んだのだ。すぐにシノが回収したけど、それ以来タダオはシノを見るとひどく怯えていた。
「ねえ、ほら、見てください。夕陽が綺麗ですよ。」
夕陽なんて見る気になれなかったけど、サイがもう一度、見てくださいと言うから仕方なく顔を上げた。
「さあ、もう終わりました」
「え…?」
てっきりまた、早く早く、と腕を引かれると思った。
「もう、終わったんだよ」
寂しそうに笑うその顔は、私がかつて大好きだった、走りながら駆け寄ってくる、あの、タダオの表情とよく似ていた。
「ねえあなた本当は…」
言い終わる前にキス、された。
口を塞がれた、と言った方が近いかもしれない。
「もう、大丈夫なはずだよ。」
頭を2、3回撫でられて、撫で方がひどく私のものと似ていた。
「今まで、ありがとう。名前も、付けてくれて嬉しかった。元気でね。さようなら」
サイ特有のですます調はそこにはなく、私が何か言う前に彼は走って闇に溶けた。
しばらく立ちつくしていた足を、今度は自分だけの力で、一歩、二歩、前へ進む。
家に戻る前に、火影さまの所へ行って任務を貰ってこよう。
早くしなきゃ。
一日は早いからね。
二度目の、お別れ
(それは 今後こそ永遠の?)