「あ、ちょっと待ってください。」
「え?」
小走りをしてその場を離れるといきなりしゃがみ込んでまじまじと地面を眺める彼に頭からクエスチョンマークが飛ぶ。
何やってるの?と私もその場に駆け寄ると「四つ葉のクローバー探してます」なんて真剣な顔で言うから思わず吹いた。
「どうして笑うんですか?」
「や、ごめんごめん!サイがそんなこと言うなんて意外だったからさ」
わたしも小さい頃よく探したりしたなあ。好きな男の子と両想いになりますように、とか、喧嘩しちゃった女友達と仲直り出来ますように、とか、願い事の種類は様々だったけれど。
「あ、あった!ありました!」
「え、本当っ?」
覗き込むと確かにそこには四つの葉を付けた草が風にゆらゆらしていた。サイはそれをプチンと優しくつまむ。
「名前、手を出して。」
「くれるの?だって、私が見つけたわけじゃないし…」
「僕は、名前に渡したくて探してたんだから。」
はい、と渡された葉を風に飛ばされないよう私は慎重にポケットにしまった。
「ありがとう…。」
「幸せになってね」
彼はにこりと笑ってすぐさま立ち上がると再び腕を強く引っ張る。
「さあ、行こう。」
私はもうその手が嫌でなくなっていた。