男好きってわけじゃなかった。寄ってくるから話すだけ。どんなに機嫌が悪くても相槌さえしなくともあっちが勝手に喋ってくれるから楽ではあった。時々面白いやつもいて、仲良くなることもある。俺んち来る?って家に呼ばれて、そこに彼氏とか彼女とか名前の関係がなかったとしてもヤられることがほとんど。私も私で抵抗しないし、したとしても「最初からそういうつもりだったんだろ?」って、こいつらほんとに馬鹿。


「仁王、お昼奢って?」
「何食べたいんじゃ」
「普通にパンとかで大丈夫だよ」
「おまいさんが一緒に購買まで来てくれるんならええよ」
「やった!ありがとー」


最近は隣のクラスの仁王と仲がいい。彼は家が金持ちだかなんだかよくわからないがいつも気前よく奢ってくれる。他の男もちょくちょく出してはくれたがブルガリの時計を渡された時はさすがに血の気が引いた。「別に変な意味じゃなか、後で請求もせん。」私はただ少し食べたり、交通費や雑誌なんかを出してもらうくらいが丁度いいのだ。別に金がないわけじゃない。高価な物が欲しいわけでもない。


自分の財布で順番を待つ女子達の冷めきった視線をしりめに食べるクリームパンはやっぱりクリームパンで、普通に美味かった。食べ物に罪はない!


だけどある日私が何日間男とヤらない期間を我慢できるかみたいな賭けが彼女たちの間でされてると聞いて、無性に腹が立った。確かにニ日に一回は誰かしらの家に行ってヤってる事は事実。だけど私はむしろ被害者で、自分から誘った事は一回もない。断ればソイツと気まずくなるから仕方なく、だ。


「今日俺んち来るんだよね?」
「幸村くん」
「放課後昇降口にいるから」
「ごめん!今日用事できちゃった」
「他の男?」
「ううん、違うよ」
「正直に言ってくれていいよ。俺、それでも好きだから」
「ほんとに違うんだってば」
「仁王?」
「いい加減にして!!」

その日はすぐに家へ帰った。用事なんてなかったけど、行ったら幸村くんに挿れられるのは確か。私はヤることを快感に生きるほど、馬鹿な女じゃないんだ。

携帯を開くと幸村くんから今日はごめんとメールが来ていて返すと仲直りしちゃってきっとまた家に呼ばれるであろうから返事はしなかった。アドレス帳を開くと登録されてるのは男ばかりで無性に苛々する。

もういっそのこと誰とも連絡をとらないようにして、学校でも男子と話さないようにした。あんなに仲良かった仁王でさえ最近はもう目も合わさない。

私は0か100しかない不器用な人間で、まあそもそも器用だったらこんなことにはならないけどとにかくある程度とか程々にとかが上手く使えない極端人間だった。これに関してはマジで代表になれるかもしれない。


でも気付いたらいつもは持つだけの財布がどんどん軽くなってそろそろ底をつくし、予定いっぱいだった放課後もただ家に帰るだけの時間になった。なんだか寂しくて寂しくて寂しくて、


「ねえ…仁王、今日家行っていい?」


私は身体の芯からクソビッチだったんだなあって









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