ずっと疑問に思っていた。それが何なのか。
誰にも言わなかったのは、自分がおかしな人間だと思われたくなかったから。


「はじめまして。」

「よろしくなあ。」

ほら、また。
彼の頭上でタイマーが動き始める。ぼうっとそれを眺めてたら、どこ見てんと笑われた。

それからいくらかの月日が経って、変わったことは、彼の数字が出会った頃より少なくなっていることと、わたし達が愛しあってるということ。


「結婚、しようか」

1月の雪に、彼の言葉が降り注ぐ。


わたし達は気持ち悪いくらい平和だった。些細な言い合いは少なくなかったが、それも多くはなかった。"円満""順風"そんな言葉がよく似合った。

「幸せそうねえ」
そう言って笑うお母さんの頭の数字は、いつも彼よりほんの少し多い。


そんな彼が病に陥った。医師によるともうだめらしい。わたしは四六時中看病に徹した。最期が近いと、なんとなくわかっていたからかもしれない。

「俺、お前に言ってなかったことがあんねん。嘘やと思うかもしれんが、最後まで聞いてな…」

掠れた声が病室に響く。わたしは小さく頷いた。

「実はな、能力っちゅーんかな…、その人との別れのタイムリミットが見えんねん。変な奴や思われんのが嫌で誰にも言われへんかったけど、それでもやっぱりお前とのカウントダウンも見えたから、絶対後悔しないように、上手く揉め事や争いは避けてきたつもりや。…なんやろなあ、変な能力やけど、あると人の有り難みが嫌ってほど感じん。……今まで、ありがとなあ。」

部屋の機械音が段々大きくなる。廊下から看護婦さんの走ってくる音も聴こえた。

「…っちゅー話や!」


最後に見た笑顔は、今まで見た中で一番幸せそう。


いいなあ
謙也は上手く自分と付き合っていったんだね。




20110515 修正









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