真っ白とはこういうことを指すのだろう。右を見ても左を見てもひたすら白くて、下を向くと自分の足があった。
ここはどこ?ひどく頭が痛い。両手はだらしなくぶら下がって上手く力が入らないし全身が重い。そうだ、確か私は
「死亡時刻午前2時13分41秒。」
真っ白の床に真っ黒な燕尾服が栄える。…誰?持ち主の声は落ち着いていた。
「この度はご愁傷様です。さてお疲れでしょうがそうゆっくりもしておれません。人類が絶え間なく流れるため、あなたもさっさと生まれ変わってください。」
男の早口をBGMにゆっくりと目を閉じる。
死ぬことは辛くない。彼の手で殺められたなら幸せ。今も死ぬほど幸せ。「里を潰すと決めた」それが、最後に聞いた彼の声。
「希望の家系や性別はあります?」
「…サスケと、うちはサスケと生きたい。」
「正気?君、恐らくまた殺されちゃうよ」
書類のようなものをめくりながら彼は言う。
「そしたら、また幸せもらえちゃうね」
彼と生きた、幸せだった。
男は書類に一筆書き込むとこちらを向いてニコリ。体が光に飲み込まれて、なんだろうこれ、すごく温かい。懐かしい。何かに似てる。ああそうだ、サスケに抱かれた時に似てる。すぐにわからなかった私は馬鹿だなあ…。
記憶が薄れるなか、生前を思い出した。そういえばさっきまで忘れていたけど、サスケは泣いていた。
床に倒れこみ呼吸もままならない、そんな朦朧とした私の意識を繋ぎとめたのは絶えず上から頬を打ちつけた彼の涙だった。
「生まれかわるより、一部として生きたいなあ…」
できるなら心臓がいい。
命を繋ぎとめる、決して手放せないあなたの弱い弱い心臓。