「え?」
「だーかーらあっ!!」
彼女がバッと目の前に突き出す。なんだ、ただの紙切れじゃないですか。
「商品券1万円分!い ち ま ん え ん!福引きで当たったの!」
「はあ…そうですか」
良かったですね、と言おうとしたが口をつむいだ。本当にこの言葉で合ってるのだろうか。僕は感情っていうものがまだ上手く使えないから時々自分の発言にすごく不安になるんだ、変なこと言ってないかな、って。
「サイの新しい筆も買ってあげるよ!もうそれ、ぼろぼろでしょ?」
「本当ですか?そうですね、確かにこれは結構年期入ってます」
思いがけない収入になんだか胸がわくわくした。あ、これが嬉しいってやつなのでしょうか。なら…
「商品券は、良い事ですね」