あの衝撃的な出会いから三カ月。 「ねえ、今日のお勧めは?」 「あたしも聞きたーい!」 「雪名くんが勧めてくれるマンガって本当にいいよね」 「そう言ってもらえると嬉しいな。ちなみに今日はこれ!」 こいつ、雪名皇はカリスマイケメン店員へと成長していた。 「いやーうちの看板息子は今日も絶好調だね」 明日店頭に並べる本をチェックしていると横から弾んだ声で話しかけられる。 「店長、絶対顔で採用しましたよね」 「ん?なにかな?」 「…いえ、別に」 深く息をついてひと際輝いている場所を見つめると雪名が取り巻きの女の子達に今月一押しの少女マンガを紹介しているところだった。 雪名が入ってから、若い女の子の来店数が大幅に上がり売上も上がった。レジに入ればそこだけ長蛇の列を作ったりと雪名様様だ。以外にも本人は少女マンガが好きらしく、それならばと店長が俺と同じ少女マンガを担当させるようになった。 顔だけじゃなく物腰も柔らかだし、仕事も出来る。展開が激しい少女マンガを一緒にもってくれて助かってはいるが未だにあの眩しすぎるオーラには慣れずにいた。 「木佐さん」 閉店の作業も終わり、家に帰ろうとすると雪名に呼び止められ俺は振り向いた。直視出来ていないのは疲れ果てている今の俺にこのキラキラとした雪名は少々きついせい。 「ん?」 「あの、来月やるフェアなんですけど俺も企画に参加してもいいですか?」 突拍子もない言葉に思わず顔を見やる。 「あ?あー元からそのつもりだったんだけど」 「まじっすか!俺あのマンガ大好きなんで絶対やりたいと思ってて」 「そうなんだ」 まさに二次元に出てくるような整った顔が笑顔を作ると男でもドキっとしてしまう。 (すげーまつ毛長い。…って何考えてんだ俺は!) 「じゃあ早速企画案練りましょうよ!明日木佐さん休みですよね、今から夜食ついでにどっかで飯食べながら」 「え?ちょっと、おい、こら引っ張るな!」 そんなこんなで気づけば俺は雪名と企画会議と称して飯を食べる仲になり、気も合うのか日を追うごとに結構この時間が楽しみになっていた。 「おつかれー」 「お疲れ様です。フェア大成功でしたね」 二人で考えたフェアのおかげで売上は上々。営業の人からもお礼を言われ、気分の良くなった俺たちは明日も仕事があると言うのに最近通い慣れた居酒屋で灼を交わしていた。 「来月も上手い酒が飲みたいなー」 「あはは、木佐さん親父くさいです」 「うっせーな。親父で結構」 喉を鳴らしながら順調にコップを空にしていく。 そして何時間もたたないうちに俺は酔っ払ってしまい、雪名がいつもと違う雰囲気を纏っていたことに気づけずにいた。 だから、言われてすぐに理解が出来なかったんだ。 「木佐さん、俺」 「今月いっぱいで辞めるんです」 だって想像すらしていなかったから。 いつの間にか (君の隣に居るのが当たり前になっていた) |