純テロ・初恋 | ナノ


同じフロアにあるサファイア文庫編集部の女性たちに呼び出され何事かと思ったら

「ちょっと仕事の要件があって…ここ座ってくれます?」

笑顔でそう言われたので何の疑いもなく

「座るだけでいいんですか?」
「はい、待っててください」

用意された椅子へ腰を下ろした。

すると

「んだよ、呼び出して」

何処からともなく高野さんの声がして。
どうやら同じく呼び出されたみたいだ。

編集部の人は目を輝かせ、若干息を上げながら

「小野寺くん、これ咥えて」

差し出すのは、よくお店に売っているポッキー。
なんでこのタイミングなのか、しかも咥えるって。

けど反論をする間もなく、一方的に口に突っ込まれ、いつ待機していたかもわからない編集部の人に二人係で座っていた椅子へと抑えつけられた。

さすがにここまでくればいくら鈍感な俺だってわかる。
わかるんだけど。

自由を失った体ではどうしようもなくて。


「それじゃあ高野さん。お願いします」
「は?」
「え、今日ポッキーの日ですよ?ほら、小野寺君が咥えてるんでどうぞ!」

(待て待て、どうぞの意味がわからない!)

あの「ホテル同室ダブルベッド事件」の後からこうゆう厄介事に巻き込まれる事が多々あった。どうやら「何もなかった訳がない!!!」と思いこんで…いや、合ってる。合ってるんだけど!これはさすがにないだろう!!!

だけどこの男は、首を左右に振って全力拒否をしているのにあろうことか両頬を包んで

「いただきます」

ご丁寧に舌舐めずりまでしてから反対を向いている先っぽに口を付ける。

「きゃー」だの「色っぽい」だの周りはやじ馬ばっかり。

段々と近づく高野さんの顔に恥ずかしさを抑えきれず目を思いっきり瞑ると、しばらくしてぱきっ。と綺麗な音が鳴った。

恐る恐る確認するとそれは俺の唇の手前で折れており、どうやら最悪な展開は免れたらしい。

編集部の女性たちからは非難の声もあったが正直ほっとした。

けれどそれもつかの間。

「小野寺はキスしたら腰が抜けて使い物にならないし、お前らには見せてやらない。…続きは今夜な」

去り際にこんな台詞を残したのがきっかけでしばらくサファイア編集部は大騒ぎでそれこそ仕事になっていなかった。

俺はとゆうと拘束からは解かれたものの

「今夜、頑張ってね」
「明日楽しみにしてるから!」

訳のわからない激励と箱に残っているポッキーを貰って、痛すぎる視線と火照ってしょうがない顔と体に頭を抱えたのだった。



2011/11/11小野寺律の場合
(ポッキーなんて嫌いだァア!)