とある日の早朝。 久々に時間が取れたからどこか遠出しようと昨晩計画をたてて、今に至る。 まだ外は薄暗く、空気も幾分か冷えていた。 「木佐さん、朝ごはん出来ましたよ」 「んー」 「早く食べないと、予定してた電車に遅れます」 ニュースからは天気予報が流れていて、どうやらこれからの天気は下り坂らしい。 せっかくなのに、と内心項垂れているとようやくベッドから起きた木佐さんは乱れた髪もそのまま、寝ぼけづらで早めに出したこたつへと真っ先に進んだ。 「んあー電源入ってねー」 「付けましたよ。でも付けたばっかりで温まっていないんです」 「こたつの馬鹿野郎」と言いながら顔をテーブルにくっつけて、目の前に運んだ朝食に手をつけようとしない。 「木佐さん先食べてください」 「寒くて喰えねえ」 「何言ってるんですか、これから着替えたりしなきゃいけないんですから、ほら」 強引に手に箸を持たせてもそのままで、本当に食べる気がないらしい。 気は長い方ではあるが、今日を楽しみにしていた分いつもより短くなっているかもしれない。怒鳴りそうになるのを抑えて優しく促す。 「木佐さんってば」 「雪名、寒い」 「もうすぐ温まるはずです。ちょっと待っててください」 意地も出てきていつもなら低温火傷にならないように、と低めにしている温度を上げようとこたつへ手を突っ込むとそこはしっかりと温まっていた。 木佐さんってそんなに寒がりだっけ?そう思って顔を向けると何故か赤い顔をしていて。そういえば、いつも朝起きると必ず一回ぎゅっと抱きしめて「おはよう」の挨拶をしていた事を思い出した。 今日は出かけることで頭がいっぱいでしていなかった気がする。 もしかして凄い可愛いことしてたんじゃないか? そう思うよりも早くさっきまでこたつに居た木佐さんが胸に飛び込んできて。 「バカ雪名」 顔を隠すように埋めていたけれど、耳ははっきりと赤く染まっていた。 「木佐さん」 「うるせー」 「すいません、気づかなくて」 あやすように見えるところへ唇を落としてやる。 「き、気持ち悪いって思ったか?」 「え?なんでですか?」 「幼稚なことしてるし」 「してたとしても気持ち悪いだなんて思いませんよ。俺、大好きな木佐さんがすることならなんでも許しちゃいますから。それより、木佐さんが可愛すぎて困ってます」 「どうしましょう?」そう問いかけると 「天気悪くなるから出かけるのは今度にしよう」そう言って背中に腕を回すから、「そうですね」緩む頬をそのままにしてまだ少し体温の残るベッドへと移動した。 その温もり (ひとつじゃないから触れ合いたい) |