「小野寺さんにお願いがあるんです!」 担当作家さんとアシスタントさんにここまで頼まれればやるしかない、やるしかないだろ。 数日前に懇願された風景を思い出しながら溜息をつく。 「イベントに一緒に出てください!これ着て!!」 なんのイベントだなんて聞いていない。知りたくもない。 でもこんな姿を世間様に曝すなんて本当に心が折れそうだった。 「痛いな…」 鏡にはセーラー服を着た俺。 と 「小野寺いる…か……」 「!?」 コンビニの袋を落として固まっている高野さんが映っていた。 ×げーむ セーラー服編 「どわぁぁあああ!?」 「何してんだ、お前」 「あ、あんたこそ何勝手に人の家入ってんだよ!!」 「いや、開いていたから」 「ふざけんな!開いていたら勝手に入るのかよ!!」 「なんで俺が一々お前の許可取らなきゃいけないんだ」 (しにたい) よりによって高野さんに、一番知られたくない相手に見つかってしまった。 とりあえず傍にあったベッドから布団を取って体に巻きつける。 「セーラー服」 「うっ」 「イベントで着るそうだな、小野寺」 意地の悪い笑みを浮かべながら近づく高野さん。 「知ってたんですか」 「んー。まあな」 (やっぱりしにたい) 頭が痛くて倒れそうになる。もういっそ倒れた方が楽かもしれない。 「良いんじゃねーの」 「なにがですか?」 「それ、セーラー服」 "似合ってる" 二人以外誰も居ないというのにわざと耳元で囁く高野さん。 反論しようと顔を向けるといきなりキスをされて、体をくるんでいた布団を剥ぎ取られた。 「スカート短かいな」 荒々しいそれに呼吸もままならなくて肩で息をしている俺とは違い、ひとり余裕そうにしている高野さんは一言そう言って左手で太ももを撫で上げる。 「っ!?」 さっきのキスと今の感触で変に意識してしまい、体を強張らせると 「感じた?」 と、またもや耳元で囁く高野さん。 「んな訳ないでしょ!」 自分でもわかるぐらい顔が熱いから、説得力に欠けるのはわかっているんだけれど言わずにはいられなかった。 とにかくこの状況から逃げたくて、すぐ後ろのベッドに腰掛けると 「ちょ」 高野さんも続いて横に腰掛ける。 「あの、何して」 「ん?何って?」 思わず後ずさると、さっきと一緒で高野さんもベッドに乗りあげる。 「誘ってんじゃねーの?」 「はい?」 「そんな格好して、顔赤くして、自分からベッドに来たんだろ?」 「どうしてそうなるんですか!俺は別に」 そこで言葉を失った。 明るかった部屋が薄暗い明りへと変わる。 動いた拍子にたまたま手元に置いてあった電気のリモコンを押してしまったようだ。 それっぽい雰囲気になってしまって、胸が緊張でいっぱいになる。 少しずつ距離を詰めてくる高野さんはジャケットを脱いで自分のネクタイを緩めながら 「せっかくだし」 と悪戯っぽく笑って 「保健体育の授業です」と俺の胸元にあるセーラー服のリボンへと手を伸ばした。 happy Halloween!2011.10.31 |