夏夜の煌びやかな世界。 夜空に星があるように、人工的だけれども此処には無数の光がある。 …なんて。 少女漫画みたいな事考えてる俺って恥ずかしすぎやしないか? 乙女思考になってしまうのは、少なからずこいつに責任があるはずだ。 「木佐さん、浴衣凄い似合ってます」 「お前も、その…似合ってる」 男、木佐翔太。 恋人と初めての夏祭りです。 「ゆ、雪名。こっち通らないか?」 からんころん。 慣れない下駄を鳴らしながら進む遊歩道。 「メイン通り通らなくてどうするんですか!大丈夫です。木佐さん可愛いから自信もってください」 少し前を歩く雪名に、人も出店もあまり出ていない道を指さすとあっさりと断られてしまった。 浴衣。身に付けたのは一体何年ぶりだろう。 せっかくの祭りだから、と張り切っていた雪名がご丁寧にも二人分用意して、しかも色違いを持ってきた。最初は恥ずかしすぎるから、と断固拒否をしていたんだけど嫌がった俺の顔を見た時の雪名の顔がとても寂しそうで…まあ惚れた弱みと言うやつか。結局折れて袖を通してしまった。でも… (やっぱり恥ずかしい…!) 人が多くなるにつれてそれはじわじわと心に染みを作っていって大きく大きく広がってゆく。男二人で色違いの浴衣って、なんか、あれだろ!明らかにおかしいじゃないか! とても様になってしまう雪名の隣に居るのが居たたまれなくて、気づかないうちに下を向いてしまう。 「木佐さん」 お前だったら俺なんかじゃなくて可愛い女の子と来れるだろ。 思わず口から出てしまいそうな言葉。 だけど雪名は妙に感が鋭くて、俺の考えてることがお見通しなのか 「木佐さん、こっち向いてください」 駄々をこねる子供をあやす様に、優しい口ぶり。 頬を包むちょうどいい体温で俺を安心させてくれる。 「どうしたんですか?お祭り、楽しみにしてたじゃないですか」 「は、恥ずかしいんだよ」 「なんでですか?木佐さんこんなにも可愛いのに」 「色違い…変だろ、男同士で」 「気にしすぎですよ。ただ横を通っただけじゃわかりませんって」 「でも「木佐さん」 「俺と一緒は嫌ですか?」 きゅうっと胸が痛む。 恋人と初めての夏祭り。大好きな雪名と一緒。 本当は眠れない程に楽しみにしていた。普段は表立って恋人らしいことが出来ないから、今日ぐらいは…そう思って俺なりに色々と考えてみたりもした。 意地をはって雪名を困らせているのはわかっているのに、どうして素直になれないのだろう。 ここで俺が「やっぱり帰りたい」そう言えば雪名はきっと「わかりました、また来年にしましょう」とか言うに違いない。 (それで…いいのか?…いや、良くないだろ!) 心の中での葛藤。 その間ただ黙って俺の言葉を待つ雪名に声には出さないけれど「わがまま言ってごめん」と一言謝り 「悪い、今のなし。行こう」 浴衣の袖を引っ張って雪名よりも一歩前に進んだ。 「木佐さん…」 「なっ、そんな嬉しそうに笑うなよ!」 「だって嬉しいんですもん。今日、めいっぱい楽しみましょうね!」 「お、おう」 いつの間にか追い抜かれて手を強く握られる。 一瞬にして赤くなってしまう俺を見て 「可愛い」 と雪名は言うけれど、俺からしたら 煌びやかな世界を背景に笑う雪名は本当に身惚れてしまうぐらいかっこいい。 「木佐さん、行きますよ」 そしてそんな奴が俺の名前を愛おしそうに呼ぶのがたまらなく嬉しいと思うのだ。 Fireworks that might not disappear DEAR 匿名様!(雪木佐) ▽お待たせしました、リクエストありがとうございます! 自分で書いてて恥ずかしい…!男同士で色違いの浴衣だなんて!そんな人達を見たら間違いなく脳内妄想でいっぱいになります(笑) ちょっとベタベタしすぎだったかな…? 個人的にはバカップルっぽい雪木佐が書けて満足です。おまけもありますのでよかったら読んでみてください。いやー木佐さん好きだ、大好きだー!可愛い受け最高← |