純テロ・初恋 | ナノ


―次の信号を右に曲がってください。

「は!?右?え、今の角!?」

―50メートル先を右に曲がってください。

「50メートルってどこ!」
「おい、お前カーナビの言うことぐらい聞けよ」
「うるさいです!ちょっと黙って、ってあれ?過ぎた?」
「…小野寺」
「はい…」
「どうやって免許取ったんだ?」
「すいません」



時刻、午前九時三十二分。
場所、隣の県へ向かっている途中。
運転手、小野寺律。

なんだか目的地へ着かない気がします。



事の始まりは早朝。
高野さんが俺の家のインターホンを連打した所から始まる。

「小野寺、居留守使ってんじゃねーよ。行くぞ」

いい加減学習しないといけない。
売り言葉に買い言葉。今日も上手く乗せられてせっかくの休日だとゆうのに高野さんとドライブをしに行くことになってしまった。正直自分でもよくわからない。

「あれ、高野さん。運転席こっちですよ」
「俺を馬鹿にしてるのか。そんなの見ればわかる。俺の車だしな」
「はぁ」
「今日はお前が運転しろ」
「え、なんでですか!無理です」
「いいから。免許持ってんだろ」
「だってほとんど乗ってませんよ!」
「上司命令だ。早くしろ」



そんなこんなで冒頭に戻るわけだが…。


「高野さんもう帰りましょうよ。やっぱり俺無理です」
「なんだ?さっき他県だろうが海外だろうがどこでも行ってやるって言ってたじゃないか」
「だから、それは」
「どうしてもって言うなら仕方ねーな」
「…」
「ん?ほら変わってやるから車止めろ」
「いいです!俺運転しますから、どうぞ寝ててください!」

高野さんの言い方が気に食わなくて思わず啖呵をきってしまった俺はハンドルを握りなおし途切れる事をしらない道を睨みつけ、曖昧な案内をする機械音に耳を傾けた。




あれから一時間弱。
少々問題が発生しました。


「下手くそ」
「…駐車場がいけないと思います」

休憩で寄ったコンビニ。
運転はようやく様になってきて一安心していたところだったのですが

駐車場に上手く入れられません。

「だって高野さんここ狭いですよ」
「は?普通だろ。大体何回切り返ししてんだよ。あーもう、小野寺降りろ。俺が入れるから」

言い返せるほどの力量がなかったため俺は渋々運転席を譲り、降りた傍から高野さんが駐車する様子をただ眺めていた。

やはり乗りなれている人は違う。
瞬きを数回するうちにぴったりと白線の中へ収めてしまった。

「すいません」
「いや、いいけど。どうだった?」
「?」
「車の運転上手い奴ってかっこいいとか思わねーの?」
「はぁ。思いますけど」

横を歩いていた足が急に立ち止まったため釣られて自分も足を止める。
吹き抜けるような風が髪を遊び、自然と整えるために伸ばした腕が黙っていた高野さんに取られぶつかりそうなところまで引き寄せられた。


「惚れ直した?」


耳打ちされた一言は予想すら出来なかった言葉で、ワンテンポ置いて脳に響きその台詞に喉がつまる。ついでに小さく息を吹きかけられたため体が強張り、頬に熱が集まるのを止める事が出来なかった。

「なっ!そ、そもそも惚れてないんですけど!」

その反応を面白がるように笑う表情がまた余裕に見えて、俺ばかりずるいと身長差であまり効果がないと知ってはいたが思いっきり眉をしかめてやった。



「よし、行くか」

買い物を終え再び車に戻る。
さっきの事がまだ尾を引いているのか、心臓の音がラジオから流れるロックチューンの音楽よりもテンポが早い。

「何怒ってんだよ」
「別に」
「まだ気にしてんの?」
「だって公共の場ですよ!」
「やましいことなんかしてねーだろ。それとも何?してほしい?」

直感的にやばい、と自己防衛で前に出した手は呆気なく捕まってしまい鈍い衝突音と若干の痛み、そして反転した視界。まだ日も出てる頃だからかはっきりと見えてしまう高野さんの顔。運転席のシートが倒されたと理解するのにはそう時間はかからなかった。

「顔、赤い」
「や、やめてください!ここ何処だと思ってんですか!」
「誰も見てねーよ」
「見えますから!いい加減にしてくださいって」
「はいはい」

以外にもあっさりと引いた体に疑問符が浮かぶ。
やっぱりこの人も常識ぐらいはあるか

そう一瞬でも思った俺が間違いだった。



「他の奴にお前の表情も声も全部。見せたくも聞かせたくもないから」



こんな事を言って本当にこの人は俺をどうするつもりなのだろう。
まだまだ長い道のり。事故をして病院送りになる可能性より
高野さんのせいでおかしくなる可能性のほうが格段に高い気がした。




Is the distance with you meters how many another?





「お前飲み物は?」
「あ、買うの忘れました」
「飲みたくなったら言えよ。口移しで飲ましてやる」
「っ、結構です!!!」





DEAR ササニシキ様!(カプ指定 高律。律運転のドライブデート)


▽リクエストありがとうございます!お待たせしました^^
ドライブって感じのドライブしてませんが(←)いかがでしたでしょうか…?

車の運転は好きです。友達と遊びに行くのにも大体自分が運転している気がします。
りっちゃんの運転は…なんだか怖そうだな、と思って書きました(笑)
高野さん×デレ律のドライブデートも書きたいですね、いつか。運転は高野さんで助手席に乗るりっちゃんが飲み物のキャップ開けてあげたり、信号待ちでキスねだったりwめっちゃ妄想だし、そんなりっちゃんあり得ないんですがw