「高野さん、りっちゃんまたねー」 「お疲れ」 「お疲れ様でした」 エメ編のメンバーで暑気払いと言う名の飲み会をした帰り、同じマンションに住んでいる俺と高野さんは駅へ向かって歩いていた。 「今夜人多いですね。夏休みだからでしょうか」 いつもとは違う街のざわつき。 普段なら仕事帰りの人しか見ないのに、小さな子供を連れた親子だったり学生ぐらいのカップルなどやはり見慣れない光景ばかりだった。 「何、お前知らねーの?」 それを横目で見つつ足を進めていた俺に 少し前を歩く高野さんは呆れた声で問いかける。 「知らないって、やっぱり今日何かあるんですか?」 まるで俺だけが仲間はずれにされたようで気分が悪い。知っているなら教えてくれればいいのに、肝心な部分には触れず 「こっち来い」 帰る方向とは逆を進む高野さん。 俺は何があるのか知りたくて増えてゆく人混みの中を置いていかれないように必死について行った。 「これは…」 そして近づくにつれて見えてきたのは、道を囲むように連なる出店の数々。賑わう人々は色とりどりの浴衣に身を包む。 「今日お祭りなんですか?」 「そう。お前、ここの祭り初めてだろ」 「初めても何も、お祭りなんて久しぶりです」 自分でもわかるぐらい弾んだ声が出てしまい、恥ずかしくなった俺は反射的に顔を反らした。 「ほら、行くぞ」 不意に掴まれた手に心臓が跳ね、一気に体温が上昇する。 「ちょっと、ここ外です!」 「うるせー。いいから来い」 さっきと同じ、行き先もわからないまま進む大きな背中。 相変わらず人は多いし見失いそうになるけれど あの時とは違ってはぐれないよう俺の手は温かい手に包まれていた。 「着いた」 人混みを抜けても離してくれないからずっと下を向いて歩いてきて、やっと顔をあげた所は人ひとり居ない静かな場所だった。 「ここどこですか?」 俺の言葉を無視して高野さんは適当に腰を下ろす。 繋がれた手を催促するように引っ張るから仕方なしに少し横にずれて俺も座る。 お互いが黙ったまま数分過ぎた頃。 「あっ」 夜の空に一輪の大きな花。 「花火だ」 次々と打ちあがるそれは、お祭りで見た浴衣の色の様に何色も重なって咲いてゆく。 「楽しそうだな」 夢中になっていた俺に声をかけた主はもちろん隣に居る高野さんで 「花火も、久しぶりだったんですからしょうがないでしょう!」 子供扱いされているのかと思って声を荒げると 「高野さん…?」 真剣な表情をしながら、手を握る反対の手で頭を撫でられる。 「ここにお前と来たいと思った」 突然紡がれる嘘を感じさせない言葉の音。 「他にもお前と見たい物、行きたい場所、したい事。俺はたくさん持ってる」 撫でていた手が頬に添えられ、まるで逃げるなと言う様に光る瞳。 「これからの俺の時間、お前でいっぱいにして」 少し掠れた声が花火の音よりもよく聞こえてしまって 「俺はもう高野さんでいっぱいです」 冷める事をしらない熱のせいにし俺は小さく呟いた。 Day of certain summer (「まだ足りないだろ」そう重なる唇を受け入れるのは、貴方がもっともっと欲しいからかもしれない) DEAR 匿名様!(カプ指定 高律) ▽詰め込んだ結果こうなってしまった(笑) 甘い高律になりきれているか不安です。 リクエストくださった匿名様、お待たせしました! こんな話でよければ貰ってやってください^^ |