純テロ・初恋 | ナノ


数週間後。



宮城の居る教科担当室に通うようになってからか、俺と宮城は普通に会話が出来るぐらいに進展した。姉貴の弟、という立場を利用して勉強を教えて欲しいとねだれば面倒そうにしながらもやってくれる。宮城は優しい。

半ば無理矢理登録した宮城のアドレス帳を開く。明日、また勉強を見て欲しい。と短い文を打って送信。早く返事が来ないだろうかと携帯を開けたり閉めたり、時々じっと宮城の名前を表示する機械的な文字を眺めては頬を緩める自分。他人が見たら気持ち悪いと引くだろうけど、仕方ない。

急に手の中で震えた携帯を見れば、承諾の言葉と時間が書かれている。またどきどきと高鳴る鼓動を静める様に深呼吸をして、早く明日になってほしいとベッドの中に潜り込んだ。



放課後、足早に教室を出て胸を抑えながら宮城の元へ向かう。宮城に出会ってから俺の心臓は壊れてしまったようで、飽きずにリズムを上げていた。

そっとドアを開けると宮城は机に突っ伏したまま寝ていて、窓から流れる風に黒い髪が揺れている。声をかけて起こせばいいのに、初めて見るその姿にどうすればいいかわからなくてとりあえず近くの椅子に腰掛けた。

煽り言葉に引かれて買った本を鞄から取り出す。起きるまで待っていよう。そう思い読みはじめた恋愛小説。同感する部分が多く、改めて俺は宮城が好きなんだ、と理解した。

どれぐらいそうしていただろう。すっかり日も暮れて、気づけば夕飯が出来る頃。慌てて立ち上がろうとして留まる。宮城はまだ寝ているんだった。余程疲れているんだろう。それなのに自分の勉強を見てやると言ってくれた宮城は本当に優しい。

けれど流石にまずい。起こそうと近づいて手を肩に伸ばし、触れる寸前で引っ込めた。何を思ったか夜風に揺れる髪に触りたくて躊躇いながらもそっと指先で撫でる。

「宮城…」

さっき読んだ小説の内容がフラッシュバックする。最終的には悲しい形で終わったのだ。

俺の想いは世間的には否定されるもので、宮城にだって受け入れて貰えなくて。自分が凄く辛くなるかもしれないし、傷つく事もあるかもしれない。

でも



「好きなんだ、宮城」



辛くても、傷ついても、宮城と出会えたこの世界が俺にとっては一番だ。





milk







▽aiko「milk」より。
ねぇ、目を見て。ねぇ、口見て。雪もミルクも霞む静かでスロウな真っ白い光に一緒になりたい。

心躍る世界が他にあったとしても乱れたあなたの髪に触れられるこの世界がいい。

忍ちんが乙女すぎました、でも後悔はしていない。