「起きたか?」 声のする方へ視線をやると、そこにはさっき出逢ったばかりの金髪の彼が居た。 場所はなんと僕の部屋で、驚きを隠せずにいると 「辛そうだったからよ、その…体。ここまで運んでやった」 殺されるもんだと思っていたから静かに紡がれる言葉にまた僕は驚いた。 「どうして…」 「お前が思っている通り、俺はお前の血が欲しくてしょうがねえ。でもなんでかわかんねえけど、殺したくもねえんだ」 本人も戸惑っているような、そんな感じで、きっとそれが真実なんだろうと思った。 「いつも俺は人を襲う時、今回こそは少しだけ血をもらって逃がしてやろうと思うんだけどよ、匂いに負けて結局最後は殺しちまうんだ。止まんねえんだよ」 声も辛そうで、これがさっき「俺の獲物だ」と言っていた彼なのかとさえ疑った。 「お前に関しては本当に殺したくなんかねえから、血も吸えないと思った。少しでも口にしたら、きっと上物の血だ。俺は止められる自信がねえ。だから、吹っ掛けたくせに都合がいいこと言ってるとわかってるが、今夜のことは忘れろ」 「悪かった」 小さく一言零して窓の外へと飛び出そうとする彼の手を僕は自分でもよくわからないうちに手に取ってしまって 「なんだ」 馬鹿なことを口にしていた。 止めなければ日常が戻ったのに、僕は敢てそれに逆らったのだ。 「僕の血でよければ差し上げます。殺されるかもしれないけど、でも、貴方が僕を殺したくないと言ってくれるなら、殺される前に僕が止めます」 信じられない、そう彼の瞳が語っていた。 「だから大丈夫です」 握った手に力を込めて、もう一度。 「大丈夫、僕が貴方を止めます」 自ら首筋を露わにして彼の首へと腕を伸ばした。 人外な生物だと思っていたのに以外にも体は温かく、きっと心も実は温かいのかもしれない。そんなことを思いながら、僕は首に恐る恐る牙を立てる彼を待つことにした。 A conscientious vampire |