完璧だった。 二週間も前から約束をして、右手にはコンパクトにまとめた一泊二日様の荷物、左手には甘党の彼が好きなお菓子の入ったビニール袋。この日のために新調した洒落っ気のある洋服。 夕食の献立だって、寝る前までに言う告白だって全部全部用意してきたのに 「青葉先輩、俺も今日泊まるんでお願いしまーす」 ドアかから出てきた金髪のいけすかない後輩のせいでぶち壊しだ。 けど「こんにちは青葉先輩」後ろからちょこんと顔を出す彼が可愛く笑いかけるから僕は嫌みのひとつも言えず「おじゃまします」とだけ呟いた。 「どうぞ」 差し出されたグラスの中で氷がカランと音をたてる。 「なんで紀田くんが居るの」 帝人くんのために買ってきたはずのお菓子は次々と封を開けられテーブルの向こうに座る紀田くんの口へと運ばれてゆく。帝人くんはトイレに行っていて席を外していた。我が物顔で冷蔵庫を開けてお茶を出してきたことになんだか「俺は何度も来ているんだ」と言われているようで僕はいい気がしない。 「昨日帝人が今日青葉先輩が泊まりにくるって言っていたんで」 「別に君が来なくてもいいじゃないか」 「だめっすよ」 先輩、ナニするかわかんないし。 (あーしねばいいのに) 僕が今日をどんな気持ちで迎えたと思っているんだ。 確かに邪な気持ちがないと言えば嘘になるけど。 それから少しの間お互いに黙ったままでいると紀田くんの後から帝人くんがやってきた。 「うわー青葉先輩、こんなにお菓子いいんですか?」 「うん。帝人くんが好きだと思って」 「ありがとうございます!…どれから食べよう」 目をキラキラと輝かせながら彼が居ない間に出来てしまった重苦しい空気を呑気な言葉で取り払っていく。「正臣、ちょっとどいて」と紀田くんの横に座ろうとしたから「こっちおいでよ」と声をかけたんだけど、これまた可愛らしく首をかしげてしまった。 「ほら、帝人座れよ」 「正臣何から食べた?」 「俺?このチョコから食べた」 「え、以外。こっちからいくと思ってた」 「それと悩んだんだけどよ、こっちにした」 完全に二人だけの会話と二人だけの世界。 苛々とした心が顔に出ていたのか、紀田くんが「してやったり」の顔でこちらを見る。 (ほんとむかつく) テンポよく口の中へお菓子を運んでいく帝人くんに女々しいとは思いながらも「こっちの方が広いから僕の隣に来ればいいのに」と零すと数回瞬きをした後 「だってこっちに座れば青葉先輩の顔を見てお話出来るじゃないですか」 となんでもないように言いのけた。 僕はまさかこんな回答がくるとは思っていなかったからほんの少し飲み込んだお茶でむせてしまい、よく見ると向かいに座る紀田くんも同じようにむせていた。 「大丈夫ですか、先輩?あと正臣も」 彼の手は相変わらず甘い固形物の上をさ迷っていて、きっと僕たちが今の言葉で何を想像して心臓の鼓動を早くさせてるのかなんて帝人くんは知らないんだろうなと息を整えながら「美味しい」と笑うその顔を見つめた。 You know nothing (青葉先輩が僕の家にいるなんて非日常的だ!) DEAR スミ様!(青帝正 年齢逆転) ▽初めてこのサンドに挑戦したのですが…年齢逆転をしたら青葉くんのうりなドMっぽさがなくなってただの先輩になってしまった←)夏→夏休み→学生同士→お泊まり会!と単純な考えです。寝るときは三人で川の字ですよ、もちろん帝人くんが真ん中で! こんな短文ですいません、書きなおしもいたします。遅くなり申し訳ありませんでした。 |