「し、静雄さん」 「なっ、なんだ!?」 「あれ…」 "コノ先入ルナ危険" 「本当に此処で合っているんでしょうか」 幽霊だとか怪奇現象とか今までの人生の中で関わりを持ったこともないし(セルティさんはそうゆうのとは違う気がする)、信じていない。 だけど…此処は……。 暗い雑木林 細く、そして荒れている道 カサカサと葉を撫でる風の音 (気味が悪い) どうしたって心細くなってしまう僕に気づいたのか、たまたまなのか、 「大丈夫だ、俺が居る」 隣でぎこちない笑みを浮かべる静雄さんと一筋の光をまとったようなその言葉が後押しとなって、僕たちは足を進める事にした。 二人分の足音と情緒溢れる蝉の声。 ふと僕の頭には電話で聴いた新羅さんの言葉が浮かんだ。 (「ちょっと頼みたい事があるから静雄と二人で来てほしいんだ。詳しい場所はメールで送るよ。あぁ、セルティも居るからね」) 急を要する話ぶりだったから急いで静雄さんの元を訪れメールに添付してあった地図を見ながらやってきた。東京にもこんな場所があるのか、としみじみ感じていたがさっきを境にそれは次第に大きな不安へと変化する。 普段池袋とゆう静寂とは無縁の地に居るからか、ここは静かすぎる。 静かすぎてとても怖い。 知らないうちに握りしめていた手のひらは汗ばんでいて僕は服の裾で拭い、そしてまた握りなおす。得体のしれない何かに襲われてしまいそうで、こんな意味のないことを繰り返すのだとどこか客観的に思っていた。 「帝人」 「はいぃぃいいっ!」 突然振りかえった静雄さんに驚いて僕はつい変な悲鳴をあげる。 「あ、悪い」 「いえ、すいません。ちょっとびっくりして。どうしました?」 いや、その…。と歯切れの悪い言葉でこちらの様子をうかがう静雄さん。 なんだろう、とただ瞬きを繰り返して待っていると 「へっ?」 布ではない感触が手に触れて僕はまた驚いた。 (え、ちょっと、どうしよう!) 「俺が握っててやるからよ…その、もう少しだろうから」 見開いた目で確認出来たのは静雄さんの手に包まれる自分の手。 そして、表情はわからないけど真っ赤に染まる両耳。 つまり僕と静雄さんは今お互いの手を、 …手を繋いでるんだ。 なんて思ったら顔から火が出てしまいそうなぐらい恥ずかしい。 「帝人、行くぞ」 「は、はいっ」 それからの二人の足取りは順調だった。 たぶん地図を見るかぎりあと15分も歩けば着くはずだ。 手を繋ぐことにも若干慣れてきて人の体温が安心すると言うのは本当なんだ、と、妙な所に感心をしてみる。 いや、実は別の事を考えていないと恥ずかしくて変に意識してしまうのだ。 静雄さんと手を繋ぐ。 そんなこと夢にも思わなかった。 いつもガードレールやらなんやら重たそうな物を持ち上げるその手が僕の手を包んでいる。 「くすっ」 「帝人?」 「あ、すいません。いや、なんだかおかしくて」 「なにがだ?」 わからない、そんな顔で僕を見る静雄さんに 「だってあんなに喧嘩が強いのに、貴方の手はこんなにも安心するし温かい。そしてそれを実感出来るのはきっと静雄さんの事を知っている無数の人間の中でもほんの一握り…いやそれ以下しかいないでしょう?けど僕は今その貴重な一人になれたんだなと思ったんです」 こう告げると 押し黙ってしまい、何か悪い事を言ってしまったかなとひとり焦っていると 背後から木々の間を走りぬけてくるような音が耳に届く。 静雄さんにも聞こえたらしく僕たちは一気に緊張感を高のらせた その時 バサーーーッ!!! 「ぎゃぁああああ!!!」 「っ!!おい帝人!!!」 …恐る恐る目を開ける。 飛び込んできたのは恐ろしい怪物でも、幽霊でもなんでもなくて (!?!?!?!?!?) 「いってー」 静雄さんのドアップだった。 「大丈夫か、帝人?」 「す、すいません、あれ、ほんとなんか、あのわざとじゃ!!!」 「落ち着け」 僕はショート寸前の頭をフルに動かし状況を確認すると、どうやら厚かましくも僕は静雄さんに馬乗りをしてしまっているらしい。 あの時何かが飛び出してきた拍子でタックルをかましたのか、人間窮地に追い込まれると何をしでかすかわからな… 「あっ、幽霊!」 思い出したように声に出すと、察しのいい静雄さんは嗚呼、と一言零し指を指す。 その方向には「にゃあ」と可愛らしく鳴いた黒猫が一匹。 「え、猫?」 「ああ。猫だったみたいだ」 「あ、そうですか」 ほっと胸を撫で下ろすのもつかの間、自分の状態を思い出し顔に熱が集まる。 「ご、ごめんなさい!いつまでも!!!」 「帝人」 すぐさま立ち上がり体をどけようとしたのに、何故か静雄さんに両肩を掴まれ結局何も変わらないままお互い向き合っていた。 「あの…」 「帝人、その、さっきの言葉嬉しかった」 さっきと言うのはたぶん手を繋いでいた時に僕が言った感想みたいなものの事なんだと思う。 「俺はいつだって壊したりする事しか出来なくて、だからお前があんな風に思ってくれたのがすげー嬉しかった」 「いや、すいません。偉そうに口走ってしまって」 すると静雄さんは首を横に振り、今までに聞いたことのない優しい声でぽつりぽつりと言葉を紡いでく。 「帝人はどうだか知らねーが、俺はお前と話をしたり時間を共にするのが嫌じゃない。あーじゃなくて、たぶん、好きなんだ。お前と居るのが」 好き。 たったその二文字が心の心拍数を乱していく。 「こうやって向き合って体温を感じて、たったそれだけなのに安心するっつーか。俺は臨也なんかと違って、なんて言えば帝人が意識してくれるとか、そんなのはわかんねーけど」 「好きだ、帝人」 聞こえてしまいそうなぐらい大きく脈を打つ心臓が、一段と大きく鳴った気がする。 静雄さんのことは嫌いじゃない。 好きかと問われれば、たぶん好きなんだと思う。 彼は僕にないものをたくさん抱えていて、同時に重く辛いものもたくさん持っている。 そんな静雄さんの支えになれるのならなりたいし もし人間生きて行く中で誰かひとりその役割を担ってくれる人を選ばなければならないなら、僕は迷わず静雄さんを選ぶ。 だけどそうゆう理屈とかなしに、単純に、 「僕は静雄さんの五文字の告白が嬉しいです」 言った後急に恥ずかしくなり、はにかむと ほんのりと頬に色が付いた静雄さんが大事そうに抱きしめてくれた。 The thought which a black cat carries (離さないでね、いつまでも) 「セルティ帰ろうか」 「(え?静雄達を待っているんじゃないのか?)」 「まあ、そうなんだけど…目的は達成されたし。あーあ、ほんと手のかかる二人だな。周りから見れば一目瞭然なのに。セルティ君も思うだろ?」 「(なんの話だ?)」 「フフフ。今度二人に会えばわかることだよ。さあ帰ろう。二人にはちゃんと連絡しておくから」 「(静雄と帝人の邪魔をしたのか!?)」 「ああもう違うよ。怒らないで。むしろ褒めてほしいぐらい。あー臨也が知る時が楽しみだな」 「(嫌な顔してるぞ、お前)」 「ん?そうかな?この間の仕事で君が危険な目にあったから、その仕返しだよ。まあ何はともあれめでたし、めでたし」 DEAR 徳様!(静帝 肝試し) ▽肝試しじゃないだとっ!?← 大変お待たせ致しました!期限に間に合わせる事が出来ずに申し訳ありません! どうしてこうなったのか、聞きたい。やりたこと、言わせたい事を詰め込んだらこんな事に!いつもどこか切り捨てなきゃと思いつつ出来ない管理人です、すいません。 普通の肝試し詰まんないかな、なんて思った私がバカでした。イチャコラしてる静帝が書けて満足ですが、こんなんじゃねーよバカ!って返品してくださってもかまいません! |