アスファルトがゆらゆらと揺れて見える真夏の正午。 なんでこの子はかき氷が食べたいだなんて言うんだろう。 しかも遠慮を知らない太陽の下、静かな公園でだ。 「真夏日だからこそ冷たいものが食べたいんじゃないですか」 「え」 「口から出てましたよ。さっきの言葉」 忙しそうに手と口を動かす帝人くん。 支えている手の平よりも大きいかもしれないカップには既に溶け始めている氷と、苺味だと謳う体に悪そうな赤色のシロップ。おまけに白いどろどろとした練乳がこれでもかとかかっていて、見ているだけでお腹がいっぱいだ。 「食べますか?」 「いや、大丈夫」 いつもなら自分も感心するほど雄弁に語る口も暑さのせいで必要最低限の言葉しか出てこない。いくら日陰のベンチだからってこんな所に長時間居たら頭が沸騰してしまいそうだ。 早く食べてもらって場所を移動したい。 室内がこれほど恋しくなったのは今日が初めてなんじゃないか。 祈る思いで帝人くんを眺めると 「あっ」 掬った氷が上手く入らなかったのか、口の端から練乳が垂れる。 「そんなに大きく盛るからだよ」 「早くしないと溶けちゃうじゃないですか。持ってないと思いますけど、ハンカチないですよね?」 「あるわけないでしょ」 その間にも垂れ続けるそれは、なんだかあれに見えて。 この炎天下のせいだと思う。そんな風に考えてしまうのは。 確かに見た目は似ているよね。 味は正反対なんだけどさ。 怪しく光りながら首筋まで下っていき不快なのか、帝人くんは顔をしかめスプーンを離した指で拭いとる。 細く短い指に絡む甘いそれ。 生憎この公園には水道がないため手も洗えない。 どうするのか、とそのまま見ていると 「んっ…」 口を小さく開き自身の舌で舐めとった。 シロップのおかげか、いつにも増して赤く色づいていてその様子に喉が鳴る。 ただ黙って見ている俺が気になったのだろう。 「欲しいですか?」 大きな目を向けてカップを差し出す帝人くんになんだか申し訳なくなり明後日の方向へ視線を移す。 「臨也さん、あげますよ。何照れてるんですか」 「照れてないから。もういいから早く食べてくれる」 「なんですか、その言い方!人が好意的に言ってるのに」 「だから欲しくないし、別に」 「じゃあなんで」 「ああもう!」 急に大きな声を出す俺に驚く帝人くんの口を塞げば、予想よりもはるかに甘いその味が拍車をかけ理性を崩していくのがわかる。 「ちょっと、臨也さん!」 まだ首筋に残る零れた跡を舌で追いながら無自覚なこの子と夏のせいだと自己的な結論付けをし、俺はこの誘惑に乗ってやることにした。 Heat Disorder (君と俺も溶ければひとつになれるかな) DEAR 庵様!(カプ指定 臨帝。公園でかき氷ネタ) ▽夏のかき氷やアイスと言われるとつい、えろい方へ持って行きたがる管理人です。すいません。 庵様、リクエストありがとうございました!爽やかなかき氷ネタが良ければ書き直しますのでご連絡ください。 |