ぽつ、と地面に一滴の雫が落ちたのを見て、そういえば昨夜の天気予報で言ってたなと思った時にはもう遅かった。夕立が襲ってきた。折り畳み傘はロッカーの中だ。濡れるのを最小限に押さえるため小走りで少し先にあるシャッターが降りた古びた店の軒先を目指す。

「ついてないなー…」

時計は18時半を指していた。家路を急ぐ人は20パーセントの降水確率を信じて傘を持ってきたのであろう、色とりどりの傘が目の前に広がる。
その中にひとり、何かおかしい人がこっちへ走ってきた。何がおかしいって、傘を差してるのにびしょ濡れなのだ。軒先に入り傘を閉じてふぅーと一息ついた彼のあまりの濡れ方に尋ねざるをえなかった。

「…大丈夫ですか?」

え?あぁ、これ?と彼はびしょ濡れになった自らのスーツを見た。

「傘差すの下手みたいで、雨が降るといつもこうなんです」

だから大丈夫です、と彼は目尻を垂らして照れくさそうに笑った。傘差すの下手って、なんなんだ?この人は天然なのか?とぐるぐる考えてると彼は傘を差し出した。
「もしよかったら使って下さい」
「え、あ、そんな悪いですよ」
「こんななりじゃ傘差しても差さなくても変わらないし」
「ふ」
自虐的な言い方に思わず吹いてしまった。
「す、すみません」
「じゃあ罰として使って下さい」
シャッターに傘を立て掛けてじゃ、と言って駆けていった。彼はすぐ色とりどりの傘に紛れて見えなくなった。
置いていった傘を広げてみる。明日も雨が降ればいいのに、と思いながら軒先を出た。雨脚は弱くなっていた。









傘を差すのが下手な人に容赦なくキュンとしてしまう和久原はおかしいのでしょうか
(2011.06.25)
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