車道をはさんで右隣、自分と同じ方向に向かって歩いてゆく男性(ひと)に気が付いたのは、雨脚がほんの少し強くなった時でした。
そのような事は今までに幾らでもあったのに、この時ばかりは、彼のまとっている雰囲気が、私の心を掴んで離してくれなかったのです。
とても、雨が似合うひと。




一歩一歩踏み出すたび、よく分からないのですが胸の鼓動が高まってゆきました。一体なんだろうこの高まりは。彼は私より先にゆく事も無ければ遅れてゆく事も無い。同じペースで歩いている。ただいつも歩く時より息切れがするのはよく分からない鼓動の高まりのせいにしておきました。すべての神経が私の右半身に集中し、彼の存在を読み取っている。


「…どきどきする」
そのどきどきが何であるかに気付いてしまったけれど「ちがう、ちがう」と小さく首を振りました。
勇気を出して、ちらっと、右隣を歩く彼を見た。傘が邪魔をしたけれど、ほんのり紅くなっている頬が見えたのです。
ああ、寒いですよね。そう思う私の頭上では雲間から太陽が顔を覗かせている。

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